春風、君を待つ

ピンポーン


 静寂を破り、我が家に突然の来客を告げるインターホンの音が響いた。


 重い腰を上げて玄関へと向かい、ドアを開ける。そこに立っていたのは、見慣れた大学時代の友人2人の姿だった。


 驚きつつも軽く挨拶を交わした、その直後だ。彼らの様子がどこかおかしい。よく見ると、2人は僕の顔と右側にある部屋の様子を、交互に二、三度チラチラと視線で行き来させている。
 そして、何かを隠すかのように、それまで手に持っていた紙袋をすっと素早い動きで背中側へと回したのだ。


 きまずい沈黙を破るように、1人が不自然な笑みを浮かべて言った。
「たまたま近くを通りかかってさ、元気かなーと思って来てみたんだ。元気そうで良かったよ、な?」


 話を振られ、それまで隣で黙って俯いていたもう1人の方が、ひどく狼狽しながら口を開いた。

「、、ああ、、うん、ほら今日!!、、、いや、うん、元気そうで良かった、。」

 どこか視線を泳がせながら、彼らは早口に言葉を付け足す。

「まあ、今度は時間あるとき飲みに来るからさ!またな」

 嵐のような慌ただしさで、そう言い残した。


 そのまま、2人は何かに追われるように、いそいそと背を向けて帰っていった。
 

 残された僕は、ただただ呆然と立ち尽くす。


「変な奴ら、。」 

ぽつりと呟いた僕の言葉は、静まり返った玄関に虚しく消えた。