春風、君を待つ

 網膜にぼんやりと光を感じるよりも前に、ずきずきとした重たい頭痛で目を覚ます。

「うぅ、、」
喉の奥から乾いた息が漏れる。

 寝返りをうってソファから起きあがろうとしたけど、自分の体が思うように動いてくれない。バランスを崩してそのままフローリングの床へと叩きつけられてしまった。

 フローリングのひんやりとした感触に肌の感覚を預けながら、ぼんやりと天井を見上げる。

 昨日の夜のことは何も覚えていない。
いくら記憶を辿ろうとしても霧がかかったように何も思い出せない。

 昨日は金曜日。どうやら家で一人でお酒を飲みすぎてしまったらしい。身体が鉛のように重たくて、頭を鈍器で何度もガンガンと殴られるような痛みが続いている。視線を床にやると中身の空っぽになった缶ビールがあちこちに何個も転がっていた。

 そのまま床に寝転び、転がった缶ビールを眺めているうちに、胸の奥から言葉にできないような寂しさがじんわりと湧き上がってきた。

 ただの二日酔いじゃこんなに寂しくはならない。


この部屋に他に誰かがいた___


 誰かもわからない誰かの、優しくて少し寂しい気配が、部屋の隅っこに暖かく残っているような。
そんな不思議な気がしてならなかった。