共有させて、ワカハちゃん

春の陽光がキャベツ畑を優しく撫でる穏やかな日々は、突如として鳴り響いた重機の爆音によって打ち破られた。村の入り口に現れたのは、黒塗りの高級車と、「リゾート開発計画」と書かれた看板を掲げた作業員たちだった。佐藤とワカハが村外れの廃屋で「独占」の愛を育んでいる間に、村の存続を揺るがす巨大な資本の波が押し寄せていたのだ。

「……久しぶりね、佐藤くん。まさかこんな『秘境』で野生児みたいな生活をしてるなんて思わなかったわ」

高級車から降りてきたのは、タイトなスーツに身を包んだ知的な美女、一条(いちじょう)レイカ。彼女は佐藤の父親が経営する会社の優秀な秘書であり、佐藤にとっては都会時代の「憧れのお姉さん」その人だった。

「あなたのお父様からの伝言よ。『もう十分遊んだだろう。村をリゾート地として買い取って更地にする。お前は東京に戻って、相応の地位に就け』……だって」

レイカの視線は、佐藤の隣で戸惑うワカハへと向けられた。土に汚れ、野生的な色気を放つワカハを、レイカはまるで「珍しい標本」でも見るかのように冷ややかに観察する。

「それが、あなたの選んだ『独占』の相手? 都会の洗練を捨ててまで手に入れたのが、この田舎娘だなんて。……佐藤くん、あなたの価値が下がってしまうわ」

レイカの冷徹な言葉は、佐藤がようやく築き上げた「二人だけの世界」に鋭い楔を打ち込んだ。都会の論理が、田舎の迷信を暴力的に上書きし始めたのである。

「黒き影 アスファルトに 埋もれゆく 里の情景(ひかり)を 誰が守らむ」