共有させて、ワカハちゃん

林間学校の喧騒が過ぎ去り、村に秋の気配が忍び寄る頃。静かな一本道を切り裂くような爆音と共に、それは現れた。真っ赤なスポーツバイクを操り、土埃を上げて佐藤の目の前に止まったのは、ライダースーツに身を包んだ金髪の美少女。ヘルメットを脱ぐと、そこには都会のモデルをも凌駕する整った顔立ちと、獲物を定めるような鋭い瞳があった。

「……あんたが噂の『都会の供物(くもつ)』? 悪くない顔してるじゃない」

彼女の名は神楽リン。村長の娘でありながら、中学から東京、さらには海外へと渡っていた、この村きっての「異分子」である。リンはバイクから降りるなり、呆然とする佐藤の胸元に指を這わせ、その指を自分の唇に当てた。

「ワカハの匂いが染み付いてる。あの子、相変わらず手癖が悪いわね。この村の共有ルールを、自分の独占欲を隠す隠れ蓑にしてるのよ」

リンの放つ香水の香りは、キャベツの匂いに慣れた佐藤の鼻腔を暴力的に刺激した。彼女はいきなり佐藤の首筋に顔を寄せ、熱い吐息と共に囁く。

「でも、都会の遊び方を知ってるのは、私だけ。今夜、旧校舎の屋上に来て。ワカハには内緒で、本当の『お礼』を教えてあげるから」

その挑発的な誘いに、佐藤の心臓は激しく波打つ。ワカハという絶対的な存在がありながら、リンの放つ「都会的な毒」に、彼は抗うことができなかった。