翌朝。霧が湖面を覆う中、佐藤は自分のテントで目を覚ました。
ワカハの姿はもうない。
撤収作業のためにワカハがいたテントの横を通ると、そこからはまだ、昨夜の「残骸」が漂っていた。
複数人の男女が入れ替わり立ち替わり過ごしたテントの中。
そこには、誰のものともつかない体温の混じり合いと、閉ざされた空間特有の、むせ返るような匂いが居座っていた。
(……この匂い。このテントの中で、彼女は僕じゃない誰かとも……)
佐藤は自分のジャージの袖を嗅いだ。
そこには、確かにワカハの匂いが残っている。だが、それはサチの匂いや、森の土の匂いと混ざり合い、純粋な「彼女だけ」のものではなくなっていた。
「あ、佐藤くん。おはよ。……撤収、手伝って」
ワカハが、朝の光の中で、何事もなかったかのように声をかけてくる。
ジャージの襟元を正し、爽やかな笑顔を浮かべる彼女。
昨夜、あの狭い空間で自分の名を呼んでいた少女と、目の前の健康的なJK。
どちらが本物なのか、佐藤にはもう分からなかった。
彼女の体は、この村の自然と同じように、循環し、共有されている。
その圧倒的な事実に打ちのめされながら、佐藤はただ、自分のジャージに残った微かな「彼女の痕跡」を、消えないように握りしめるしかなかった。
ワカハの姿はもうない。
撤収作業のためにワカハがいたテントの横を通ると、そこからはまだ、昨夜の「残骸」が漂っていた。
複数人の男女が入れ替わり立ち替わり過ごしたテントの中。
そこには、誰のものともつかない体温の混じり合いと、閉ざされた空間特有の、むせ返るような匂いが居座っていた。
(……この匂い。このテントの中で、彼女は僕じゃない誰かとも……)
佐藤は自分のジャージの袖を嗅いだ。
そこには、確かにワカハの匂いが残っている。だが、それはサチの匂いや、森の土の匂いと混ざり合い、純粋な「彼女だけ」のものではなくなっていた。
「あ、佐藤くん。おはよ。……撤収、手伝って」
ワカハが、朝の光の中で、何事もなかったかのように声をかけてくる。
ジャージの襟元を正し、爽やかな笑顔を浮かべる彼女。
昨夜、あの狭い空間で自分の名を呼んでいた少女と、目の前の健康的なJK。
どちらが本物なのか、佐藤にはもう分からなかった。
彼女の体は、この村の自然と同じように、循環し、共有されている。
その圧倒的な事実に打ちのめされながら、佐藤はただ、自分のジャージに残った微かな「彼女の痕跡」を、消えないように握りしめるしかなかった。



