深夜二時。入れ替わりが再び行われ、佐藤のテントにようやく「本命」がやってきた。
音もなく入ってきたワカハは、サチが残していった空気の層を、自分の匂いで塗り替えていく。
「……佐藤くん。……サチ、上手だった?」
「……そんなの、どうでもいいよ。……君は? 君はどこで、誰と……」
「……内緒。……でも、私のジンガのリズム、まだ覚えてるでしょ?」
ワカハは佐藤の上に跨った。ジャージの布同士が擦れる、カサカサという乾いた音。
だが、その内側は驚くほど湿り、熱を持っていた。
狭いテントの中、外気から遮断された空間は、二人の体温で煮詰められていく。
(……ああ。これだ。この匂いだ)
それは、汗と、ジャージのポリエステル臭と、そして奥底にある、ワカハという少女の生々しい芳香が混ざり合った、逃げ場のない「籠もった熱」だった。
佐藤は、彼女の体を強く抱きしめる。
今、自分の中に流れ込んでくる彼女の感触だけが、他の男に上書きされた記憶を必死に書き換えてくれると信じて。
「森の夜(よ)に 籠もる吐息の 熱きかな 誰(た)が名と知らぬ 汗にまみれて」
ワカハが耳元で詠む短歌に、佐藤は快感と、耐え難い悲しみを同時に覚えた。
音もなく入ってきたワカハは、サチが残していった空気の層を、自分の匂いで塗り替えていく。
「……佐藤くん。……サチ、上手だった?」
「……そんなの、どうでもいいよ。……君は? 君はどこで、誰と……」
「……内緒。……でも、私のジンガのリズム、まだ覚えてるでしょ?」
ワカハは佐藤の上に跨った。ジャージの布同士が擦れる、カサカサという乾いた音。
だが、その内側は驚くほど湿り、熱を持っていた。
狭いテントの中、外気から遮断された空間は、二人の体温で煮詰められていく。
(……ああ。これだ。この匂いだ)
それは、汗と、ジャージのポリエステル臭と、そして奥底にある、ワカハという少女の生々しい芳香が混ざり合った、逃げ場のない「籠もった熱」だった。
佐藤は、彼女の体を強く抱きしめる。
今、自分の中に流れ込んでくる彼女の感触だけが、他の男に上書きされた記憶を必死に書き換えてくれると信じて。
「森の夜(よ)に 籠もる吐息の 熱きかな 誰(た)が名と知らぬ 汗にまみれて」
ワカハが耳元で詠む短歌に、佐藤は快感と、耐え難い悲しみを同時に覚えた。



