祭りの夜の、あの狂おしいほどの熱狂から一ヶ月が過ぎた。
季節は夏本番。都会ならアスファルトの照り返しに喘ぐ時期だが、この村では容赦ない蝉時雨と、肌にまとわりつく湿った緑の匂いが支配している。
佐藤は、ガタガタと揺れる送迎バスの硬い座席で、自分の膝を見つめていた。
学校指定の紺色のジャージ。吸汗速乾素材のはずだが、じっと座っているだけで背中がじっとりと湿る。
(……一ヶ月だ。あの日から、一ヶ月も経ったんだ。なのに、僕たちの関係は一ミリも動いていない……!)
隣に座る田中は、イヤホンで音楽を聴きながら爆睡している。
佐藤は、数列前に座るワカハの後頭部を盗み見た。彼女もまたジャージ姿で、ポニーテールにした黒髪が、バスの揺れに合わせて小さく跳ねている。
あの祭りの翌日、彼女は平然と「みんなのワカハ」に戻った。昨日まで、二人で月明かりの下にいたことなど、最初から無かったかのように。
問い詰めようにも、彼女のあまりに自然な「クラスメイト」としての振る舞いに、佐藤は言葉を飲み込み続けてきた。
「……佐藤くん。そんなに外を見てると、酔うよ」
不意に、ワカハが振り返った。
その切れ長の瞳。一ヶ月前、自分を求めていたはずの瞳が、今はただの「世話焼きなクラスメイト」として佐藤を見ている。その温度差に、佐藤の胸はキリキリと音を立てて軋んだ。
季節は夏本番。都会ならアスファルトの照り返しに喘ぐ時期だが、この村では容赦ない蝉時雨と、肌にまとわりつく湿った緑の匂いが支配している。
佐藤は、ガタガタと揺れる送迎バスの硬い座席で、自分の膝を見つめていた。
学校指定の紺色のジャージ。吸汗速乾素材のはずだが、じっと座っているだけで背中がじっとりと湿る。
(……一ヶ月だ。あの日から、一ヶ月も経ったんだ。なのに、僕たちの関係は一ミリも動いていない……!)
隣に座る田中は、イヤホンで音楽を聴きながら爆睡している。
佐藤は、数列前に座るワカハの後頭部を盗み見た。彼女もまたジャージ姿で、ポニーテールにした黒髪が、バスの揺れに合わせて小さく跳ねている。
あの祭りの翌日、彼女は平然と「みんなのワカハ」に戻った。昨日まで、二人で月明かりの下にいたことなど、最初から無かったかのように。
問い詰めようにも、彼女のあまりに自然な「クラスメイト」としての振る舞いに、佐藤は言葉を飲み込み続けてきた。
「……佐藤くん。そんなに外を見てると、酔うよ」
不意に、ワカハが振り返った。
その切れ長の瞳。一ヶ月前、自分を求めていたはずの瞳が、今はただの「世話焼きなクラスメイト」として佐藤を見ている。その温度差に、佐藤の胸はキリキリと音を立てて軋んだ。



