共有させて、ワカハちゃん

翌朝。佐藤は人生最高の気分で目覚めた。

(やった……やったぞ! ついに僕たちは、あの高い、高い『共有の壁』を越えたんだ! これでワカハちゃんは僕だけの……!)

彼は意気揚々と登校し、教室のドアを開けた。「おはよう、ワカハ!」と、恋人としての堂々たる第一声を放とうとした、その瞬間。

「あ、ワカハちゃん! 昨夜はいきなり消えちゃうから心配したぜー」

「ごめんごめん。ちょっと疲れちゃって。……あ、田中くん、そのお詫びに、今日のお昼、挟んで出してあげるね」

「マジか! やったー!」

そこには、昨日と全く変わらぬ、いや、むしろ昨日以上に「みんなのワカハ」として振る舞う彼女の姿があった。佐藤と目が合っても、彼女は「あ、佐藤くん、おはよ」と、コンビニの店員に挨拶するような平熱の笑顔を向けるだけだ。

(……は? ……はああああああああ!?)

佐藤の思考が完全にフリーズする。

昨夜のあの熱い抱擁は? あの耳元で囁かれた言葉は? あの、二人だけの夜は一体何だったのか!?

ワカハにとって、昨夜のセックスすらも、ただの「祭りの興奮による、ちょっとしたお礼」の延長線上に過ぎなかったというのか。
都会の「一線越えたら恋人」という常識が、田舎の「一線越えてもクラスメイト」という圧倒的な解放感に粉砕される。

佐藤の、さらなる絶望ともどかしさに満ちた「公式の恋人(仮)」への道は、ここからが本番だった。