共有させて、ワカハちゃん

数日後。村は「豊作祈願祭」の準備で沸き立ち、教室の空気もどこか浮ついていた。


「祭りの夜はさ、学校の裏とかにみんな集まるんだぜ。誰と何してもいい、特別な夜なんだ」


田中が誇らしげに語る。男子たちは、どの子に「お礼」をしてもらうかの作戦会議に余念がない。ワカハは巫女舞の練習で忙しく、佐藤とじっくり話す時間は減っていたが、クラスの男子たちは相変わらず彼女に群がり、彼女もまたそれを拒まずにいた。


(結局、僕はあの日から一歩も進めてない。ワカハさんにとって、僕は数多くいるクラスメイトの一人でしかないのか? 祭りの夜、彼女はまた、誰かへの『お礼』として消えてしまうのか?)


焦燥感と嫉妬に狂いそうになる佐藤に、練習帰りのワカハがふらりと近づいてきた。彼女の首筋には汗が光り、上気した肌が月明かりに照らされている。


「……佐藤くん。祭りの夜、人混み、嫌い?」


「……え? ああ、あんまり得意じゃないかもな」


「……そっか。……じゃあ、飽きたら、出ちゃおっか。……二人で。……私、君のあの、必死な顔をもっと近くで見たいから」


ワカハは悪戯っぽく微笑み、佐藤の耳たぶを軽く噛んだ。


「祭笛(まつりぶえ) 賑わう里を 背に受けて 二人を隠す 夜のジンガよ」


その軽やかで、どこか自分を「選んでくれた」かのような誘いに、佐藤の胸は、昨日までの嫉妬とは違う、狂おしいほどの期待で満たされるのだった。