冒頭だけBL 〜いつか続きを書くかもしれない物語たち〜

 世の中、何を言っているか全くわからないことがある。お父さんのする経済の話、テレビで聞く政治の話、そして親友が唐突に言い出す話。
 ピンポン、と呼び鈴が鳴り、ドアに駆け寄る。いそいそと鍵を開けドアを押すと、そいつは満面の笑みを浮かべて立っていた。あ、嫌な予感……。
陸久(りく)、俺、宇宙人かも!」
 ああ、やっぱり。だけどもうあまり驚かない。こいつはつくづく何を言い出すかわからないやつだから。
「そーだろーな。お前みてーな何言ってっかわかんねーやつは宇宙人じゃないと説明つかねーもん。」
 俺の言葉に空楽(そら)はにっと笑った。
「だから俺、お前と結婚する!」
 …………
「は?」
「じゃ、遊ぼ。」
 当然、とでも言うように家へ上がってくる。いや、確かに今日は遊ぶために呼んだけどさ……。え? え?
「ん? なんかヘン?」
「え、全部ヘン。」
 食い気味に答えると空楽はふっと微笑んだ。「好きってこと。」と言う顔は穏やかで、とても大人びて見えた。何年も一緒にいて、ただの一度も見たことがなかった表情。そのうえさらっと告白されたことに気付いてしまった俺は、胸がどくどく脈打って頭が真っ白になった。
「え、す、好き⁈」
「うん、好き。」
 こくんと頷く空楽は平静を装っていたが、耳が赤く染まっているのが見える。胸がきゅうんと疼いて仕方ない。
「ヤバ、俺ヘンかも。」
 そう言って胸をさすり、深呼吸をひとつふたつすると、空楽は「マジ?」と振り向いて笑った。その顔は真っ赤で、笑い方も少し歪で、全く格好がついていない。
「脈アリってことでいい?」
 答えるよりも先に空楽の顔が近付いて、唇が重なる。え——。
 一瞬、ほんの一瞬。なのに、頭の中が真っ白になってもう一度塗り直されたみたいな気分。残った感覚は、「やわらかい」だけ。
「よろしくな、りーくっ。」
 にやっとした笑顔の節々から空楽の喜びを感じる。それはきっと、俺を見つめる瞳がどうしようもなく温かかったからだろう。
「は、マジお前宇宙人やん。」
 言ってから、自分のその言葉が恥ずかしくなる。だって、これじゃ照れ隠しみたいじゃないか。