君と交差点

時が止まった。
彼女が男?まさか。こんな可愛くて、こんな可愛いハンカチも使っているのに?
俺は信じれなかった。
いや、信じたくなかった。
ずっと綺麗だと思ってた人が男だなんて。誰が受け入れられるだろうか。

「えーっと、あの…?」

気まずそうにこちらを見た。

「あっ、ごめんなさい…えーっと……」

何か言わなきゃ。また困らせてしまう。
俺が何か言う前に彼女が口を開いた。

「ごめんなさい、びっくりしましたよね。気持ちは嬉しいんですけど、そういうことなので……」

どうしよう。俺は、

「…今から、もっと変なこと言います」

彼女が男だとわかっていても、

「男だとか、どうでもいいくらい、貴方が、気になってます……」

()を好きになってしまった。

◇◇◇

「えーっと、男の人が好きなんですか…?」

信じていない顔をして聞いてきた。

「いや!そうじゃなくて…俺も、よくわかんなくて。別に、元々男が好きな訳じゃないんですよ」

と、答えると、残念そうに俯いた。

「…まあ、そうですよね。私のこと、女の子だと思って声をかけたんだから…」

それから数秒、沈黙が流れた。
耐えられなくなり、気まずさを紛らわすように言った。

「あの、俺、花谷千冬っていいます。名前、聞いてもいいですか…?」

言った後で後悔した。こんなこと初対面でしかも半分フラれたような相手に聞くことじゃない。

「あぁ、えーっと、アキ…かな」
「かな?」
「ごめんなさい。初対面の人に名前教えるのも、ちょっとあれかなーと…」

そりゃそうだ。でも、仮の名前を言ってくれただけでも十分だ。

「アキ、くん?で、いい?」
「できれば、ちゃんの方がいいかな…ほら、傍から見れば、こんな格好してる人が、くん付けで呼ばれるのもおかしいし…」

そうだ。俺がずっと見間違いしていたように、他の人から見ても、ほとんどの人は男だとは思わないだろう。

「わかった。あの、めっちゃ迷惑だってのはわかってるんだけど、も、もし良かったら、これからも、話しかけたりしても…?」

恐る恐る聞いた。何してんだ俺。踏み込みすぎだ。

「…うん。いいよ」

少し迷って、微笑みながら言った。
どうしよう可愛い。

「やった…!よ、よろしくお願いします。アキちゃん…」
「よろしくね。花谷くん」

夕日に照らされた横顔は、この世の誰より、綺麗だった。