あれから毎日、交差点で見かける。絶対に気持ち悪いやつと思われたくないから、目は合わせず何事もないように通り過ぎようとするけど、俺の心臓は何事もないわけがなく、いつも鼓動が速くなる。
「だからぁー、話しかければいいだけじゃん!こんちわーつって」
「それが出来てたら苦労しねえんだよ。お前だって、こんちわーつって飯野さんに話しかけられんのかよ」
「は、出来るし。ヤワな花谷くんとは違って!今は様子見てるだけ!」
「チキってんじゃねえか」
絶対相談する相手を間違えたと思いながらも、帰り道はずっと神田に相談していた。
そうしているうちに、神田と別れるところまで来てしまった。
「じゃ、俺はその交差点までは行けねえけどよ、今日こそ話しかけろよ」
「まあ、善処します…」
「じゃあな」
「おう。ありがとな」
反対方向へ帰っていく神田を見送っていると、こちらを振り返り、遠くから「チキんなよー!」という声が聞こえてきた。
交差点が近づいてくる。鼓動が速くなる感覚がしてきた。
少し離れたところから交差点を見ると、
いる
信号を待つ彼女の姿が見えた。
深呼吸をして、信号機の横に止まった。この止まってる時の気まずさを超えるものがこの世にあるのだろうか。
信号が青に変わり、歩き出した。いつもこのすれ違う時に心臓がギュッてなって、すれ違った後にスっと力が抜ける。
でも、今日は違った。
すれ違った瞬間、視界の端に何か落ちるものが見えた。
振り返ると、ハンカチが落ちていた。オレンジ色のフリルがついたハンカチで、一瞬で彼女の物だとわかった。
俺は咄嗟に、拾ってしまった。
拾ったは良いものの、声をかけるべきか。いや、普通に考えて声をかけるべきなのだろうけど、今の俺はそんなこと考えている場合ではなかった。
俺は、声をかけた。
「あの!…これ落としましたよ」
彼女は、横断歩道を渡りきる直前で止まり、驚いた顔で振り向いた。
「…え?」
想像してたよりハスキーボイスでギャップにやられてしまったが、そんなことはどうでもいい。…いやどうでもよくないけど。
この沈黙が俺の鼓動をもっと速くさせた。
「あ、えっと、ハンカチ。これ、違いますか?」
彼女は、ゆっくり手を伸ばした。
「…あ、ありがとうございます」
そう言うと、背を向けて歩き出した。
めっちゃデジャヴだった。
数ヶ月前にも、学校でオレンジ色のハンカチを拾って、落としたであろう男子に声をかけたら、一言お礼を言って去ってしまった。
やっぱ、声をかけない方が良かったのか…
いや、失くすよりはいいだろう。
そう自分に言い聞かせた。
そのとき、神田の言葉が頭を過ぎった。
「今日こそ話しかけろよ」
思わず彼女を見た。まだそれほど離れていない。
話しかけるなら今なんじゃないか?いや、さっきあの反応だったしな……でも、今のチャンス逃したら、この先、話しかけることはもうないかもしれない。
俺は、駆け出していた。
「あのっ…!」
彼女はまた驚いた顔で振り向いた。
「な、なにか?」
絶対戸惑っている。困らせている。最悪だ。
でも、もう戻れない。
「ずっと…!綺麗だなって…思ってました!」
彼女の目を見ながら言ったはずなのに、彼女が今どんな顔をしているかわからない。
「もうナンパでも、不審者でも気持ち悪いやつだと思ってもらっていいです!」
自分でも何を言ってるのかわからない。とにかく、なんにもわからなかった。
「……でも、めっちゃ、綺麗です…」
もうめちゃくちゃだ。神田が言ってた「話しかける」は多分というか絶対こういう意味ではないだろう。
俺はついに俯いた。
「あ…ありがとうございます…気持ちは、嬉しいです…」
彼女が口を開いた。振る時のお手本のようなセリフだった。
「えっと、多分、なにか勘違いをしていらっしゃると思います…」
「……勘違い?」
「えーっと……」
「私、男なんだ…けど」
「だからぁー、話しかければいいだけじゃん!こんちわーつって」
「それが出来てたら苦労しねえんだよ。お前だって、こんちわーつって飯野さんに話しかけられんのかよ」
「は、出来るし。ヤワな花谷くんとは違って!今は様子見てるだけ!」
「チキってんじゃねえか」
絶対相談する相手を間違えたと思いながらも、帰り道はずっと神田に相談していた。
そうしているうちに、神田と別れるところまで来てしまった。
「じゃ、俺はその交差点までは行けねえけどよ、今日こそ話しかけろよ」
「まあ、善処します…」
「じゃあな」
「おう。ありがとな」
反対方向へ帰っていく神田を見送っていると、こちらを振り返り、遠くから「チキんなよー!」という声が聞こえてきた。
交差点が近づいてくる。鼓動が速くなる感覚がしてきた。
少し離れたところから交差点を見ると、
いる
信号を待つ彼女の姿が見えた。
深呼吸をして、信号機の横に止まった。この止まってる時の気まずさを超えるものがこの世にあるのだろうか。
信号が青に変わり、歩き出した。いつもこのすれ違う時に心臓がギュッてなって、すれ違った後にスっと力が抜ける。
でも、今日は違った。
すれ違った瞬間、視界の端に何か落ちるものが見えた。
振り返ると、ハンカチが落ちていた。オレンジ色のフリルがついたハンカチで、一瞬で彼女の物だとわかった。
俺は咄嗟に、拾ってしまった。
拾ったは良いものの、声をかけるべきか。いや、普通に考えて声をかけるべきなのだろうけど、今の俺はそんなこと考えている場合ではなかった。
俺は、声をかけた。
「あの!…これ落としましたよ」
彼女は、横断歩道を渡りきる直前で止まり、驚いた顔で振り向いた。
「…え?」
想像してたよりハスキーボイスでギャップにやられてしまったが、そんなことはどうでもいい。…いやどうでもよくないけど。
この沈黙が俺の鼓動をもっと速くさせた。
「あ、えっと、ハンカチ。これ、違いますか?」
彼女は、ゆっくり手を伸ばした。
「…あ、ありがとうございます」
そう言うと、背を向けて歩き出した。
めっちゃデジャヴだった。
数ヶ月前にも、学校でオレンジ色のハンカチを拾って、落としたであろう男子に声をかけたら、一言お礼を言って去ってしまった。
やっぱ、声をかけない方が良かったのか…
いや、失くすよりはいいだろう。
そう自分に言い聞かせた。
そのとき、神田の言葉が頭を過ぎった。
「今日こそ話しかけろよ」
思わず彼女を見た。まだそれほど離れていない。
話しかけるなら今なんじゃないか?いや、さっきあの反応だったしな……でも、今のチャンス逃したら、この先、話しかけることはもうないかもしれない。
俺は、駆け出していた。
「あのっ…!」
彼女はまた驚いた顔で振り向いた。
「な、なにか?」
絶対戸惑っている。困らせている。最悪だ。
でも、もう戻れない。
「ずっと…!綺麗だなって…思ってました!」
彼女の目を見ながら言ったはずなのに、彼女が今どんな顔をしているかわからない。
「もうナンパでも、不審者でも気持ち悪いやつだと思ってもらっていいです!」
自分でも何を言ってるのかわからない。とにかく、なんにもわからなかった。
「……でも、めっちゃ、綺麗です…」
もうめちゃくちゃだ。神田が言ってた「話しかける」は多分というか絶対こういう意味ではないだろう。
俺はついに俯いた。
「あ…ありがとうございます…気持ちは、嬉しいです…」
彼女が口を開いた。振る時のお手本のようなセリフだった。
「えっと、多分、なにか勘違いをしていらっしゃると思います…」
「……勘違い?」
「えーっと……」
「私、男なんだ…けど」
