灯はそのままの足で職員室へと向かい、担任を呼び出した。
「ん、なんだ?あぁうちのクラスのやつか。なんか用でもあんのか?」
「先生…相談があります」
「そうかじゃあちょっと場所を変えるか。教室に行くぞ」
2人は教室へと向かう。
「珍しいな相談なんて進路か?」
「いえ、それとはまた別で。ちょっと友人関係で」
「ふーん。じゃそこ座れ」
「失礼します」
「で、相談ってなんだ?」
「私の友人の遥花の話なんですが…どうやら副校長先生からセクハラを受けてるようなんです」
担任の顔が少し曇った。
「お前はそれを見たのか?」
「いえ、見てはいません。実際声を聞いただけですし、遥花本人を問いただしてもなんでもないの一点張りで答えてくれませんでした」
「それでセクハラだと?」
「確かにこれだけ聞いたらそう思われるかもしれません。でも!そもそもスポーツ強化コースの生徒も部活動報告でしか入らない副校長室に私たち普通科の生徒が放課後毎日あそこに通っている時点でおかしいじゃないですか!」
一つため息をつき、
「ふーん。で?お前はそうやって副校長先生を陥れたいと?」
と言ってきた。
「…え?」
灯は思わず笑ってしまいそうになった。事実を述べているだけなのに担任は私たちからのSOSを受け取ってくれなかった。
「証拠はないですけど、調べるぐらいはしてくださいよ!」
「あぁやっとくやっとく。話は終わりか?こっちも忙しいんだまったく」
特にメモを取ることもなく担任は教室を出て行った。
呆気に取られた灯はしばらくその場から動くことができなかった。
翌日、灯は担任を問い詰める。
「先生!調べてくれましたか?」
「あ?なんのことだ」
担任はとぼけた顔をする。
「昨日相談したじゃないですか!」
「あー…あぁ、あのことか。事実確認をしたんだがなそんなことはしていないって言ってたぞ。そもそもそんなやすやすと副校長室に生徒入れないってさ」
嘘だ。多分こいつは事実確認すらしていない。
「このクズが!本当に確認したのか!」
「なんだお前。お前らみたいな普通科のゴミに構ってる暇はねぇんだよ!」
灯は思い切り突き飛ばされ尻餅をつく。
今はまだ学校に来ているがこのままではいつか不登校になるんじゃないか、最悪の場合自殺という道を選ぶんじゃないか、いろんな想像が灯の頭の中を駆け巡る。気づいた時には灯は副校長室の前まで来ていた。
バンっと勢いよく扉を開ける。
「おぉ…なんだお前」
「遥花に何をした!ここに遥花を連れ込んで何をしてたんだ!」
「あ?あぁお前あの時俺にぶつかってきたやつか。別にお前の友達には何もしてねぇよ。勉強を教えて欲しいと言われたもんで教えてただけさ」
「そんなわけないだろ!」
副校長が突然、灯の胸ぐらを掴み押し倒す。
「口の利き方に気をつけろよ?そんなに気になるならお前があいつの代わりに来い。そうだな毎日昼休みにここに来い。いいな?」
「望むところだ」
翌日から遥花は放課後、副校長室へ通うことはなくなった。代わりに昼休みに灯が通うようになった。
「来たわよ」
「そうか。じゃあ近くに座れ」
副校長は灯に近づき身体を触り始める。
「は?!」
灯はその手を払いのけ逃げようとする。
「おいおい何してる。座れよ」
「何してるじゃないでしょ。普通にセクハラじゃねぇか」
「ほぉ。だがお前の友人は文句も言わなかったぞ」
「だったらなんだ!訴えてやる!」
「いいのか?」
「え?」
副校長はスマホの画面を見せる。そこには遥花が副校長にセクハラをされている映像が保存されていた。
「何これ…盗撮までしてたのか!」
「お前が訴えたらこの映像、世にばら撒くぞ。そしたらお前の友人はどうなるだろうなぁ?わかるだろ?」
灯の耳元で囁く。
「黙って俺に従っていた方が良いんじゃないのか?」
「外道が!」
遥花もきっとこうやって何か弱みを握られて、好き勝手やられていたのだろう。もっと早く気づけなかった自分が情けなくなった。
そして事件はひっそりと起きる。
あの日を境に遥花の顔色は良くなり、6時間目に保健室へ行くことも無くなった。心から学校を楽しんでいるようだった。しかし灯は反対に顔色が悪くなり、昼休みが近づくにつれて身体が震えるようになっていた。
「灯!おーい。聞こえてるー?灯ー?」
「ん?あ、ごめんなに?ぼーっとしてた」
「今日カレーパンの日だよ?行かないの?」
「あ、え?そうだっけ?じゃあ行こうかな」
この間のような活力はなかった。約束を忘れるようなタイプではない。きっと何か悩んでいるんだ。遥花そう直感した。
「ダメだ…。やっぱスタートが遅かったから売り切れちゃってた」
「しょうがないよ。教室戻ってご飯食べよ」
教室は戻り、昼休みの時間が進むにつれて灯の顔色は悪くなっていく。
「灯。最近どうしたの?昼休みになると顔色が悪いよ」
「え?そう?大丈夫よ」
にっこりと笑うがその笑顔はやつれていた。
「ごめん。私行かなきゃいけないところあるから」
重い腰を持ち上げ、教室を出ていく。
遥花はその様子が気になったためついていくことにした。
そして灯が副校長室へ入っていく瞬間を目撃する。
もう聞かなくてもわかった。人の気配が少なくなるこの時間に女子生徒が1人であの部屋に入っていくということはおそらくやられているのだろう。自分がセクハラを受けなくなった代わりに灯がセクハラを受けている。友人の身代わりなったはずだったが、まさか自分が救われていたとは思わなかった。顔が青ざめその場から走り去る。セクハラを受けなくなって元気を取り戻し、また灯といつも通り接することができる。そう思った矢先の出来事だった。もう顔向けすることができない。遥花はその日を境に学校に来なくなった。
「ん、なんだ?あぁうちのクラスのやつか。なんか用でもあんのか?」
「先生…相談があります」
「そうかじゃあちょっと場所を変えるか。教室に行くぞ」
2人は教室へと向かう。
「珍しいな相談なんて進路か?」
「いえ、それとはまた別で。ちょっと友人関係で」
「ふーん。じゃそこ座れ」
「失礼します」
「で、相談ってなんだ?」
「私の友人の遥花の話なんですが…どうやら副校長先生からセクハラを受けてるようなんです」
担任の顔が少し曇った。
「お前はそれを見たのか?」
「いえ、見てはいません。実際声を聞いただけですし、遥花本人を問いただしてもなんでもないの一点張りで答えてくれませんでした」
「それでセクハラだと?」
「確かにこれだけ聞いたらそう思われるかもしれません。でも!そもそもスポーツ強化コースの生徒も部活動報告でしか入らない副校長室に私たち普通科の生徒が放課後毎日あそこに通っている時点でおかしいじゃないですか!」
一つため息をつき、
「ふーん。で?お前はそうやって副校長先生を陥れたいと?」
と言ってきた。
「…え?」
灯は思わず笑ってしまいそうになった。事実を述べているだけなのに担任は私たちからのSOSを受け取ってくれなかった。
「証拠はないですけど、調べるぐらいはしてくださいよ!」
「あぁやっとくやっとく。話は終わりか?こっちも忙しいんだまったく」
特にメモを取ることもなく担任は教室を出て行った。
呆気に取られた灯はしばらくその場から動くことができなかった。
翌日、灯は担任を問い詰める。
「先生!調べてくれましたか?」
「あ?なんのことだ」
担任はとぼけた顔をする。
「昨日相談したじゃないですか!」
「あー…あぁ、あのことか。事実確認をしたんだがなそんなことはしていないって言ってたぞ。そもそもそんなやすやすと副校長室に生徒入れないってさ」
嘘だ。多分こいつは事実確認すらしていない。
「このクズが!本当に確認したのか!」
「なんだお前。お前らみたいな普通科のゴミに構ってる暇はねぇんだよ!」
灯は思い切り突き飛ばされ尻餅をつく。
今はまだ学校に来ているがこのままではいつか不登校になるんじゃないか、最悪の場合自殺という道を選ぶんじゃないか、いろんな想像が灯の頭の中を駆け巡る。気づいた時には灯は副校長室の前まで来ていた。
バンっと勢いよく扉を開ける。
「おぉ…なんだお前」
「遥花に何をした!ここに遥花を連れ込んで何をしてたんだ!」
「あ?あぁお前あの時俺にぶつかってきたやつか。別にお前の友達には何もしてねぇよ。勉強を教えて欲しいと言われたもんで教えてただけさ」
「そんなわけないだろ!」
副校長が突然、灯の胸ぐらを掴み押し倒す。
「口の利き方に気をつけろよ?そんなに気になるならお前があいつの代わりに来い。そうだな毎日昼休みにここに来い。いいな?」
「望むところだ」
翌日から遥花は放課後、副校長室へ通うことはなくなった。代わりに昼休みに灯が通うようになった。
「来たわよ」
「そうか。じゃあ近くに座れ」
副校長は灯に近づき身体を触り始める。
「は?!」
灯はその手を払いのけ逃げようとする。
「おいおい何してる。座れよ」
「何してるじゃないでしょ。普通にセクハラじゃねぇか」
「ほぉ。だがお前の友人は文句も言わなかったぞ」
「だったらなんだ!訴えてやる!」
「いいのか?」
「え?」
副校長はスマホの画面を見せる。そこには遥花が副校長にセクハラをされている映像が保存されていた。
「何これ…盗撮までしてたのか!」
「お前が訴えたらこの映像、世にばら撒くぞ。そしたらお前の友人はどうなるだろうなぁ?わかるだろ?」
灯の耳元で囁く。
「黙って俺に従っていた方が良いんじゃないのか?」
「外道が!」
遥花もきっとこうやって何か弱みを握られて、好き勝手やられていたのだろう。もっと早く気づけなかった自分が情けなくなった。
そして事件はひっそりと起きる。
あの日を境に遥花の顔色は良くなり、6時間目に保健室へ行くことも無くなった。心から学校を楽しんでいるようだった。しかし灯は反対に顔色が悪くなり、昼休みが近づくにつれて身体が震えるようになっていた。
「灯!おーい。聞こえてるー?灯ー?」
「ん?あ、ごめんなに?ぼーっとしてた」
「今日カレーパンの日だよ?行かないの?」
「あ、え?そうだっけ?じゃあ行こうかな」
この間のような活力はなかった。約束を忘れるようなタイプではない。きっと何か悩んでいるんだ。遥花そう直感した。
「ダメだ…。やっぱスタートが遅かったから売り切れちゃってた」
「しょうがないよ。教室戻ってご飯食べよ」
教室は戻り、昼休みの時間が進むにつれて灯の顔色は悪くなっていく。
「灯。最近どうしたの?昼休みになると顔色が悪いよ」
「え?そう?大丈夫よ」
にっこりと笑うがその笑顔はやつれていた。
「ごめん。私行かなきゃいけないところあるから」
重い腰を持ち上げ、教室を出ていく。
遥花はその様子が気になったためついていくことにした。
そして灯が副校長室へ入っていく瞬間を目撃する。
もう聞かなくてもわかった。人の気配が少なくなるこの時間に女子生徒が1人であの部屋に入っていくということはおそらくやられているのだろう。自分がセクハラを受けなくなった代わりに灯がセクハラを受けている。友人の身代わりなったはずだったが、まさか自分が救われていたとは思わなかった。顔が青ざめその場から走り去る。セクハラを受けなくなって元気を取り戻し、また灯といつも通り接することができる。そう思った矢先の出来事だった。もう顔向けすることができない。遥花はその日を境に学校に来なくなった。
