時は少し遡り9月某日。灯は友人の遥花と共に売店に来ていた。
「遥花急いでよ!」
灯は遥花の腕を掴み階段を駆け降りる。
「ちょっと待ってよ…。うわぁ…すごい人の数…」
売店には普通科の生徒たちがごった返していた。
「そりゃ今日はあのカレーパンが売り出される日だからね!」
「カレーパン?」
「遥花知らないの?」
「何が?」
「説明しよう!ここの売店のカレーパンはね、普段はスポーツ強化コース向けにしか販売されないの。でも月に1回だけ普通科の生徒向けに販売されてこれがまぁ美味しいんだって!」
「へー」
遥花はあまり興味なさそうに答える。
「私は今日それを勝ち取るんだ!」
人ごみの中へ突っ込んでいく灯。流されたり、押し潰されたりしながらようやく1個カレーパンを手にした。
「やった!やったよ!」
「うんうん、よかったよかった。ボロボロじゃん。怪我ない?」
「なにー?大丈夫だよそんな心配しなくても。相変わらず心配性だなー」
「だってすごかったよ。とても女性とは思えないほど戦ってた」
「何それバカにしてる」
「え!してないよ…多分」
「それはしてる時の発言だぞ!まぁいいや。教室戻ろ…あ、いて」
手元のカレーパンに気を取られ、前から歩いてきた副校長とぶつかった。
「気をつけろ」
「すいません。失礼します」
去っていく2人の後ろ姿をニヤニヤしながら副校長は見つめていた。
「ぶつかったのに気をつけろだって!普通はお互いにごめんなさいだろ!なんだあいつ!」
「まぁまぁ。前を見てなかったのは私たちだし」
納得のいかない顔で不貞腐れる灯。
「そんな顔膨らましても変わらないよ。カレーパン不味くなっちゃうよ?機嫌取り戻してよ」
「それもそうね。せっかくのカレーパンがもったい無い」
おもむろに袋を開け、カレーパンを取り出す。灯は思い切りかぶりついた。
「んー!美味しい!」
「そう。よかったね」
「あ、私のかじってない部分あげるよ」
カレーパンを2つに分け遥花に差し出す。
「え、いいよ私は。灯が全部食べな」
「いいの!友達と一緒に食べた方が美味しいでしょ?」
「……わかった。じゃあ半分もらうね」
遥花はちいさくかじりつく。
「うわぁ…これ美味しい!」
「でしょ?これからは2人で買いに行こうね!」
「うん!」
その日の放課後。
「帰りのショートホームルーム始めるぞー。席につけ」
「あ、その前に。おいお前!」
担任が遥花を指差す。
「副校長が呼んでたぞ。今すぐ副校長室に行け」
「あ、はい」
副校長が?私を?疑問に思う点は多かったが、逆らう理由も無いため服校長室へと向かう。
「お、来たか」
「あの、どんなご用件でしょうか?」
「実は昼休みになぁお前の友人にタックルされたんだよ。しかも突然だ」
「私の友人?」
「そうだ。お前も見てただろう?」
「いえ…副校長先生がタックルされているところは見てませんが…」
「あぁ?!お前横に居たよな!売店でお前の友人が突然俺に向かってぶつかって来たろうが!」
副校長は灯がわざとぶつかって来たと因縁を付けてきた。
「え…あれはちょっとぶつかっただけで!わざとでもないですし、そんなタックルってほどじゃ!」
「なんだ口答えか?あぁ慰謝料どうしようかなー腕に大怪我しちゃったなー」
「そんな…」
「あいつの処分どうしようかなー退学にしてやってもいいんだけどなー」
「退学だなんて!そんな大袈裟なことじゃ…」
「じゃあなんだ?お前俺の怪我の責任とれんのか?」
「い、いえ」
「そうだよなー。ならあいつは退学だよなー」
「そんな!他に方法はないんですか?」
その言葉を聞いた瞬間、副校長は気持ち悪いほど満面の笑みを浮かべた。
「ほう。じゃあお前が俺を看病しろ。放課後、卒業するまで毎日副校長室へ通え。そうすれば退学の話はなかったことにしてやる」
遥花はここへ通えば何をされるかぐらいわかっていた。しかし友人を守るため、首を縦に振るしかなかった。
「そうか。1日でもサボればあいつは退学だからな。ではもう行ってよろしい。明日の放課後から待っているぞ」
翌日の放課後、遥花は言われた通り副校長室に来ていた。
「ほぉ、ちゃんと来たか。よっぽど友達思いなんだなぁ」
「それで、何をすれば良いんでしょうか」
「そうだな今日から毎日腕の包帯を取り替えてくれ」
怪我などしてるはずのない右腕を差し出す。
「わかりました」
遥花は素早く包帯を外していく。
「いてててて!おい!もっと丁寧に扱え!怪我人だぞこっちは」
逆らうと何をされるかわからないので言うことを聞くしかなかった。
包帯を全て外し終わり、新しいものを巻いていく。すると副校長が行動に出る。
「おーっとっと。ムズムズして手が動いてしまったよーすまんすまん」
副校長な顔はニヤけていた。おそらく手を動かしたのもわざとだろう。ムズムズしたと、言い訳を作り遥花の身体に何度も触れる。
「巻き終わりました」
「よし。ご苦労!また明日もよろしく頼むよ」
「……はい」
この日から遥花の地獄のような日々が始まった。放課後になれば毎日セクハラをされる日々。最初は何度か触れる程度だったが、それは日に日にエスカレートしていき触れられる回数や場所が徐々に増えていった。気づけば放課後に近づくに連れて、吐き気を催すようになり、6時間目のみ保健室で休むことも多くなった。
そんなある日の昼休み。
「ねぇ遥花。遥花?遥花!」
「え、あ、ごめんなに?」
「だから!最近6時間目になると保健室に行ってるけど大丈夫?って」
「あ、うん。全然大丈夫だよ。ちょっと最近身体の調子が悪くてね。遅くまで起きてるからかな」
遥花は不自然に笑う。その笑みを灯は見逃さなかった。放課後になると遥花がどこかへ通っているのは知っていた。おそらく原因はそれであろう。灯は尾行し突き止めることにした。
そして放課後。いつも通り副校長室へ向かう遥花を物音を立てないように後ろからついていく灯。遥花が部屋に入ったことを確認し、中の様子を扉に耳を当てて確認する。中からは副校長が遥花にセクハラをしているような声が漏れてきていた。
「え…遥花…どういうこと?」
頭が真っ白になった。遥花はこのことを望んでやっているのか、それともやらされているのか。どちらにしろ問題だった。灯は遥花が部屋から出てくるのを待ち伏せし、出てきた瞬間を捕らえ人目のつかない渡り廊下へと誘導した。
「遥花。どういうこと」
「……。」
「答えて!なんであんなこと…」
「しょうがなかったの。こうするしかなかったのよ」
「どうして…」
「それは言えない」
「なんでよ…じゃあ私今から副校長室に殴り込んでくる」
走り出す灯を遥花は全力で阻止する。
「だめ!それだけは絶対にだめ!」
「だったら!理由ぐらい教えてよ!」
「言えないの!それを言ったらあなたを傷つけることになるから……もう行くね。ごめんね灯」
久しぶりに遥花が笑っているのを見た。しかしその目からは涙が溢れていた。
「きっと悪いのはあの副校長だ。あいつさえ居なければきっと遥花はまた笑顔で学校生活を送れるはずだ」
灯は遥花を救うと決意した。
「遥花急いでよ!」
灯は遥花の腕を掴み階段を駆け降りる。
「ちょっと待ってよ…。うわぁ…すごい人の数…」
売店には普通科の生徒たちがごった返していた。
「そりゃ今日はあのカレーパンが売り出される日だからね!」
「カレーパン?」
「遥花知らないの?」
「何が?」
「説明しよう!ここの売店のカレーパンはね、普段はスポーツ強化コース向けにしか販売されないの。でも月に1回だけ普通科の生徒向けに販売されてこれがまぁ美味しいんだって!」
「へー」
遥花はあまり興味なさそうに答える。
「私は今日それを勝ち取るんだ!」
人ごみの中へ突っ込んでいく灯。流されたり、押し潰されたりしながらようやく1個カレーパンを手にした。
「やった!やったよ!」
「うんうん、よかったよかった。ボロボロじゃん。怪我ない?」
「なにー?大丈夫だよそんな心配しなくても。相変わらず心配性だなー」
「だってすごかったよ。とても女性とは思えないほど戦ってた」
「何それバカにしてる」
「え!してないよ…多分」
「それはしてる時の発言だぞ!まぁいいや。教室戻ろ…あ、いて」
手元のカレーパンに気を取られ、前から歩いてきた副校長とぶつかった。
「気をつけろ」
「すいません。失礼します」
去っていく2人の後ろ姿をニヤニヤしながら副校長は見つめていた。
「ぶつかったのに気をつけろだって!普通はお互いにごめんなさいだろ!なんだあいつ!」
「まぁまぁ。前を見てなかったのは私たちだし」
納得のいかない顔で不貞腐れる灯。
「そんな顔膨らましても変わらないよ。カレーパン不味くなっちゃうよ?機嫌取り戻してよ」
「それもそうね。せっかくのカレーパンがもったい無い」
おもむろに袋を開け、カレーパンを取り出す。灯は思い切りかぶりついた。
「んー!美味しい!」
「そう。よかったね」
「あ、私のかじってない部分あげるよ」
カレーパンを2つに分け遥花に差し出す。
「え、いいよ私は。灯が全部食べな」
「いいの!友達と一緒に食べた方が美味しいでしょ?」
「……わかった。じゃあ半分もらうね」
遥花はちいさくかじりつく。
「うわぁ…これ美味しい!」
「でしょ?これからは2人で買いに行こうね!」
「うん!」
その日の放課後。
「帰りのショートホームルーム始めるぞー。席につけ」
「あ、その前に。おいお前!」
担任が遥花を指差す。
「副校長が呼んでたぞ。今すぐ副校長室に行け」
「あ、はい」
副校長が?私を?疑問に思う点は多かったが、逆らう理由も無いため服校長室へと向かう。
「お、来たか」
「あの、どんなご用件でしょうか?」
「実は昼休みになぁお前の友人にタックルされたんだよ。しかも突然だ」
「私の友人?」
「そうだ。お前も見てただろう?」
「いえ…副校長先生がタックルされているところは見てませんが…」
「あぁ?!お前横に居たよな!売店でお前の友人が突然俺に向かってぶつかって来たろうが!」
副校長は灯がわざとぶつかって来たと因縁を付けてきた。
「え…あれはちょっとぶつかっただけで!わざとでもないですし、そんなタックルってほどじゃ!」
「なんだ口答えか?あぁ慰謝料どうしようかなー腕に大怪我しちゃったなー」
「そんな…」
「あいつの処分どうしようかなー退学にしてやってもいいんだけどなー」
「退学だなんて!そんな大袈裟なことじゃ…」
「じゃあなんだ?お前俺の怪我の責任とれんのか?」
「い、いえ」
「そうだよなー。ならあいつは退学だよなー」
「そんな!他に方法はないんですか?」
その言葉を聞いた瞬間、副校長は気持ち悪いほど満面の笑みを浮かべた。
「ほう。じゃあお前が俺を看病しろ。放課後、卒業するまで毎日副校長室へ通え。そうすれば退学の話はなかったことにしてやる」
遥花はここへ通えば何をされるかぐらいわかっていた。しかし友人を守るため、首を縦に振るしかなかった。
「そうか。1日でもサボればあいつは退学だからな。ではもう行ってよろしい。明日の放課後から待っているぞ」
翌日の放課後、遥花は言われた通り副校長室に来ていた。
「ほぉ、ちゃんと来たか。よっぽど友達思いなんだなぁ」
「それで、何をすれば良いんでしょうか」
「そうだな今日から毎日腕の包帯を取り替えてくれ」
怪我などしてるはずのない右腕を差し出す。
「わかりました」
遥花は素早く包帯を外していく。
「いてててて!おい!もっと丁寧に扱え!怪我人だぞこっちは」
逆らうと何をされるかわからないので言うことを聞くしかなかった。
包帯を全て外し終わり、新しいものを巻いていく。すると副校長が行動に出る。
「おーっとっと。ムズムズして手が動いてしまったよーすまんすまん」
副校長な顔はニヤけていた。おそらく手を動かしたのもわざとだろう。ムズムズしたと、言い訳を作り遥花の身体に何度も触れる。
「巻き終わりました」
「よし。ご苦労!また明日もよろしく頼むよ」
「……はい」
この日から遥花の地獄のような日々が始まった。放課後になれば毎日セクハラをされる日々。最初は何度か触れる程度だったが、それは日に日にエスカレートしていき触れられる回数や場所が徐々に増えていった。気づけば放課後に近づくに連れて、吐き気を催すようになり、6時間目のみ保健室で休むことも多くなった。
そんなある日の昼休み。
「ねぇ遥花。遥花?遥花!」
「え、あ、ごめんなに?」
「だから!最近6時間目になると保健室に行ってるけど大丈夫?って」
「あ、うん。全然大丈夫だよ。ちょっと最近身体の調子が悪くてね。遅くまで起きてるからかな」
遥花は不自然に笑う。その笑みを灯は見逃さなかった。放課後になると遥花がどこかへ通っているのは知っていた。おそらく原因はそれであろう。灯は尾行し突き止めることにした。
そして放課後。いつも通り副校長室へ向かう遥花を物音を立てないように後ろからついていく灯。遥花が部屋に入ったことを確認し、中の様子を扉に耳を当てて確認する。中からは副校長が遥花にセクハラをしているような声が漏れてきていた。
「え…遥花…どういうこと?」
頭が真っ白になった。遥花はこのことを望んでやっているのか、それともやらされているのか。どちらにしろ問題だった。灯は遥花が部屋から出てくるのを待ち伏せし、出てきた瞬間を捕らえ人目のつかない渡り廊下へと誘導した。
「遥花。どういうこと」
「……。」
「答えて!なんであんなこと…」
「しょうがなかったの。こうするしかなかったのよ」
「どうして…」
「それは言えない」
「なんでよ…じゃあ私今から副校長室に殴り込んでくる」
走り出す灯を遥花は全力で阻止する。
「だめ!それだけは絶対にだめ!」
「だったら!理由ぐらい教えてよ!」
「言えないの!それを言ったらあなたを傷つけることになるから……もう行くね。ごめんね灯」
久しぶりに遥花が笑っているのを見た。しかしその目からは涙が溢れていた。
「きっと悪いのはあの副校長だ。あいつさえ居なければきっと遥花はまた笑顔で学校生活を送れるはずだ」
灯は遥花を救うと決意した。
