恋知らぬ冷徹官僚と薄幸のかすみ草

「それから華堂家の銀行の取引を停止させ、路頭に迷った今のタイミングで、警察に通報した。今頃、逮捕されている頃だと思う」

「左様でございますか」


 冷静に返事をしたけれど、全く理解は追い付かない。確かに、義母や百合奈のおねだりに何でも応える父に違和感はあった。久我家の支援をもらったとしても、あの二人の金遣いについていけるほどの支援は受け取っていない。

 さらにどこからお金は流れているのか、疑問ではあったが、私が口を出せる範疇ではなかった。


「父は、あれから本妻を探していたが、今は花純を受け入れることに納得している」

「どうして、ですか?」

「花純を正妻として籍に入れないのであれば、俺は今すぐ内務省を辞め、久我の籍を抜けて平民になると脅した」

「は…?」


 冷静に茶に口付ける旦那様に唖然とする。この人は本当に予想外のことをする。平民になるだなんて。


「さらに、華堂家に久我家が騙された事実をすべて新聞社に売り払って、久我家を東京中の笑い者にしてやると脅した。その時の父は、顔を真っ青にしていたな。見せてやりたかった、あの顔」


 そう言って喉を鳴らし笑う旦那様。確かにそんな失態を晒せば街は歩けなくなる。きっと大旦那様は人々の笑いものになるなど、耐えられない出来事だと思う。

 どういえばいいかわからない。この人が、そこまでして私を追いかけてくるなんて思いもしなかった。