恋知らぬ冷徹官僚と薄幸のかすみ草

「女将、茶を二つ」

「はいよ!」


 笑顔で答えた女将は裏に下がり、旦那様は端の席に私を促し、彼の前に座る。旦那様は「まず、父のことは気にしなくていい」と、言葉を零した。


「何があったか、すべて教えていただけますか」

「…まず、お前に働き口ができるように手を回したのは俺だ」


 驚かない。普通、あの日出てすぐに衣食住がそろい、働けるなんてそんなわけがない。


「お前が出てすぐに、ここに使いを送り、花純を匿う様に頼んだ。ここは人手が足りないと言っていたからな」

「…店でも何度も聞きました。旦那様は店の常連だったと」

「そうだな。お前なら、ここできっと役に立てると思っていた。案の定、上手くやっていた様だし」


 結局、私はこの人の檻の中だった。だけど、事実を知った後も嫌だとは思わなかった。離れる時も、離れたくないと願っていたから。


「あれから、俺は華堂家でお前がどんな扱いを受けていたのか、真実を周りにも明らかにするために調査を入れた。元々、不審な金の動きがあったから、そのことも明らかにするために」

「不審なお金の動きですか?」

「華堂家は持っている倉庫を使い、上流階級を呼び込んで、違法賭博を行っていた」


 そんな話、知りもしなかった。まさかの事実に目を見開き、旦那様を見ていると、女将はお茶を運んできて、この場から離れる。

 この時代、賭博は確かに流行りだったが、そんなものがうちの敷地内で行われているなど、思わなかった。