恋知らぬ冷徹官僚と薄幸のかすみ草

 私がそちらの方向を見ていると、父が顔を上げ、光を失っていた目が、私を見つけた瞬間に期待に満ち、わかりやすく輝いた。給仕として働いている私を見て、助けを得られるとでも思ったのだろうか。

 私は彼らを見て、駆け寄ってくる三人を冷めた目で見ていた。自信がついたからか、意外にも怯えずに状況を見れている。

 前の私ならばきっと怯えて、この場で震えていたのかもしれない。だけど、私はもうこの人達に怯える必要はない。身分も落ちぶれている。ただの平民だ。


「花純…! こんなところに…。無事だったか?」


 今の今まで私のことなんて忘れていたくせに。会った瞬間まともに働いている私を見て気遣うふりをするなんて、小賢しい。こんな人達に私の人生をめちゃくちゃにされていたのだと思うと、自分にも腹立たしかった。


「…どうなさいましたか? このようなところで」

「行くところもなく、家族三人で働き口を探して町を歩いていたのだ。家族だろ…? 助けてくれ!」


 私の肩を掴み、縋りつく姿は、ものすごく滑稽だった。笑ってやりたいほどに。自分と母をどこまでも不幸にした一家なんて、どこまでも堕ちていけばいいと思った。

 私は父を押し返すと、距離を取った。こんな人に触れられたくなんかない。この人のせいで、私はどこまでも妾の子だった。


「申し訳ございませんが、もう私は華堂家の人間ではございません」


 私の言葉に父は目を見開き、父の後ろからこちらを睨んでいた母は近寄ってくると「何を言ってるの!? 今までお前は誰のおかげで生きて行けたと思ってるの!」と怒鳴る。

 前までの私なら、この時点で身体を震わせ怯えているだけだったかもしれない。だけど、今の私はそうではない。母を強く睨み返す。