恋知らぬ冷徹官僚と薄幸のかすみ草

 それから、数日後のことだった。

 突如、本邸から大旦那様がやってきた。険しい表情をされており、突如やってきた大旦那様に旦那様も緊張している様子だった。

 この家に突然こんな風に大旦那様がいらっしゃったのは、初めてのことだった。

 大旦那様は私を一瞥した後、旦那様に目を向ける。


「誠也。お前は知っていたか?」

「…何を、でございましょうか?」

「この娘が、華堂家の妾の子であることを」


 突如として出たその話題に息が止まる。久我家と華堂家の間で、どういう取引が行われていたか知ったところではなかった。

 だけどおそらく、華堂家は私が妾の子とは言わず、金銭の支援のためにそのまま送り込んだ。それが、どこから漏れたかは、想像もつかない。


「…婚礼の儀の後、知りました」

「知ってどうして処理をしない?」


 大旦那様の問いかけに、旦那様は口を噤んでいた。

 旦那様はここで知らないふりをして、私を汚らわしいものとして扱うこともできたのに、そうはしなかった。


「…その情報は、どこから入ってきたのでしょうか?」

「華堂家の次女が、長女は妾の子だと言いに来てな。華堂家の人間は、それを黙ってその女にここに嫁がせた。金のために。当然許されざる行為ではない」


 その言葉でわかる。きっと華堂家は、社交界には戻れない。荒廃したとはいえ、まだ家柄を保っていた華堂家も終わりを迎えたのだろう。

 そうなるとも想像がつかなかった百合奈は、ただここに戻ってきたい一心で、私が妾の子であることを大旦那様に話した。