恋知らぬ冷徹官僚と薄幸のかすみ草

 前妻の百合奈は、正直見ていられたものではなかった。

 久我家にしては食事が貧相だの、来て早々女中に対する態度、扱い。跡取りを産んでもらわなければならないと話してからの、彼女の見ていられない誘惑。彼女に触れた事は一切なかった。

 その際、俺は何故次女が来たのか、不思議でならなかった。姉がおり、更に行き遅れだと聞いていた。

 それからなんとなく、見たこともない姉の方に興味が引かれ、百合奈を追い返した。さすれば、資金調達に苦しい華堂家は、すぐに長女を出してくると読んだから。

 その予想は的中した。妹よりも大人しく、お喋りも得意ではない。すぐに一度興味は失い、少し話してみれば妾の子。

 ただ、ほんの少しだけ、彼女の境遇にも同情をしたから、初めて抱いたあの夜は、彼女を離さなかったのだと思う。

 それから、俺が彼女を気になり始めてすぐだった。前妻の百合奈が、久我家に戻せと抗議をしてきたのは。

 正直、頭痛がするような出来事だった。華堂家に戻りたいと毎日騒ぎ立てて、俺の利害と一致し、返したにも関わらず、今頃になってここに戻ってきたいなど。

 元々花純を向こうに返す考えはなかったが、彼女の反応を見たかった。妹の百合奈の為に、帰ると言い出すのか。