恋知らぬ冷徹官僚と薄幸のかすみ草

 チョコレイトを自分の部屋のテーブルの上に置いて、夕餉を食べに居間に行くところだった。旦那様と約束がない時は、変わらずダイニングではなく、居間で口にする。

 その時、廊下で後ろから「おい」と声を掛けられ振り返る。そこにはジャケットなどを脱ぎ、少しだけラフな恰好をした旦那様がいた。


「食事か?」

「はい」


 旦那様は私の返事を聞くと、奥で作業していた女中に「おい」と声を掛ける。女中は作業を止め、旦那様の話を聞く。


「花純の食事をダイニングへ」

「かしこまりました」


 今日は誘われたわけでもない。事前に約束していたものではない。突然のことに唖然としていた。女中も突然のことに少しバタバタしている。旦那様が突然、食事の予定を変更することなんて今までになかった。

 最近は、何かが少しずつ変わり始めている。


「…不都合でもあるか?」

「いえ…」 


 私の返事を聞くと、先を歩いていく。私はその後ろを静かに着いていった。