恋知らぬ冷徹官僚と薄幸のかすみ草

 それからも私と旦那様の関係は変わることはなかった。時折夜伽に呼ばれては、腕の中に抱かれ、朝まで過ごし、それ以外は部屋で過ごす。

 ただ淡々と穏やかな日々を過ごしていたのだけど、旦那様の様子が変わったのはこの頃だった。

 お勤めが終わり、帰宅すると彼はまっすぐ私の部屋に来るようになった。


「…おかえりなさいませ」


 出迎えはいらないと言われているため、
出迎えには行っていないのだけれど、これならお出迎えに行った方がいいのだろうか。


「今日はこれだ」


 そう言って私に手土産をくださる。旦那様は最近こうして毎日、何かをくださるようになった。


「あの…、最近どうしてお菓子を?」

「この間の刺繍の礼だ。意味はない」


 そう言うと部屋から出ていく。

 礼をくださるということは、そこまであのハンカチを気に入ってくれたのだろうか。

 菓子を見て、ほんのり心の奥が温まる。食べたことがないものが多い私に、旦那様はいつも買ってきてくださる。

 袋の中を見ると、前までは超高級菓子であったチョコレイトが入っていた。最近森永製菓や明治製菓がミルクチョコレイトの大量製造を成功させたため、一般市民にも普及するようになった。

 それでも私は口にしたことがなかったため、旦那様は買ってきてくださったのだ。