恋知らぬ冷徹官僚と薄幸のかすみ草

「だから、俺はお前のことも愛さない。…これは、ただの義務だ」

「…わかっております」


 旦那様の言葉にそう返事をすると、静かに頷いた。

 それなのに、こんな風に離そうとしないのはなぜ。私に、その話をしてくれたのはなぜなのか。

 ほんの少し、旦那様に近付けた気がしたのに、突き放されて苦しい。

 私には、これから先自由はあっても、本当の家族になど今世では出会えないのかもしれない。


「…もう寝ろ。話過ぎた」

「…はい」


 それだけ会話を交わすと旦那様はすでに目を瞑っている。私はその横顔を見つめていた。

 私は自由が欲しかっただけなのに、ほんの少し愛情も求めてしまっていたのかもしれない。人から愛されたことがないから、愛されてみたいだなんて。

 私なんかが絶対に望んではいけないものだ。

 ただ久我家に忠誠を誓い、子を産み、静かに暮らす。私の人生に必要なことはこれだけ。これさえ守れば、自由は保障される。

 そう頭では考えているのに、胸の内はひどく空虚なものだった。