恋知らぬ冷徹官僚と薄幸のかすみ草

 意外にも長く夜伽は続き、夜半二時。あられもない姿で、旦那様は私の肩をそっと抱き寄せ、彼の肩に頭を乗せさせた。まるで本物の夫婦のように、触れ合う。

 旦那様はその間、私の髪を撫でてくださった。優しく落ち着かせるように。


「…お前は、華堂家でどんな扱いを受けていた?」


 突然の質問に心臓が跳ねた。旦那様は私のことなんかに興味はない。だから、話しかけても来ないと思っていたから。

 今夜だってそう。夜伽が終わった後は、すぐに部屋に戻されると思っていた。予想外にも大事にされており、気持ちが追い付かない。


「…なぜ長女ではなく、次女が最初嫁いできたのか理解が出来なかった。行き遅れた姉は、毎日家にも帰らず、どこで何をしているかもわからないような女だと。だから、この家には私が来たのだと意気揚々と話していた」


 真実を話しているはずはないとわかっていた。長女を女中のように扱っているだなんて、体裁が悪いから。

 それを聞いても何も驚きはしなかった。


「だが、あまりにも俺が見ているお前と相違がありすぎる。ずっと家でおとなしく刺繍をし、女中の無礼も黙って許したお前が、なぜ妹にその様な言い方をされている?」


 正直に話すべきか悩んだ。真実を話すことは華堂家の顔を潰すこと。まだ私は、あの家に逆らうことに怯えている。

 あの頃、私には行先もなかった。出ていったところで野垂れ死ぬか、残ったところで一生奴隷生活か。どちらかしかなかった。

 その結果、私は彼らに蔑まれ、虐げられ、逆らわず怯えている毎日を過ごすしかなかった。