恋知らぬ冷徹官僚と薄幸のかすみ草

 同じように手で食べると、サクッとした食感の後に、ふわっとクリームが口の中に広がり、甘さに支配される。

 目を見開き、シュー・ア・ラ・クレームを口から離して、手で口が見えないように添える。


「…美味しい」


 思わずそう零すと、私の反応を見ていた旦那様は無意識にか、ほんの少し口角が上がっていた。

 それからすぐにいつもの表情に戻ると、食事を終え席を立った。その際、私に目を向ける。


「今夜は、俺の部屋に」


 覚悟はしていた。食事に誘われる時点で、何もないわけではないなと。

 私は静かに頷き「かしこまりました」と返事をする。旦那様もそれを確認すると頷き、この場を離れていった。

 言われていた、跡継ぎの件だ。いつかは来るとわかっていたこと。

 軽く深呼吸をし、お菓子を食べ進めた。