恋知らぬ冷徹官僚と薄幸のかすみ草

 それからは静かに食事が進んだ。特に会話はないし、旦那様もこちらに目を向けるわけでもない。私も口を開かず、黙って食事を続けた。

 終わりが近付くと、女中が食器を下げ、お菓子を運んだ。目の前にシュー・ア・ラ・クレームが目の前に来る。

 初めて食べるハイカラお菓子に食べ方がわからず、ナイフとフォークを見て困惑した。

 サクサクの生地をナイフで切れば、ボロボロに崩れ、クリームはその間からあふれる。綺麗に食べる方法が思いつかない。


「何を悩んでいる?」


 旦那様の声で、そちらの方向を向くと、私は少し顔が熱くなった。仮にもそれなりの階級のお家に住んでいたくせに、有名なこのお菓子を食べたことがないなんて少し恥ずかしかった。

 それから軽く咳ばらいをして、「実は…」と話し始める。


「この、シュー・ア・ラ・クレームを食べたことがなくて…」

「食べたことがない? なぜ? お前の妹は食べ方を知っていたが」

「…私は、与えられなかったので」


 そういった時、彼は顔を顰めた。私の扱いについて知らなかったのだろうか? 私がどんな風に扱われ、どんな風な立ち位置だったか。


「…好きに食べたらいい。手でいくのが食べやすい」

「手で、ございますか?」

「そうだ。サンドイッチのように」

「……」


 私の無言を、それすらも食べたことがないと察したようだった。旦那様は少し気まずそうに咳ばらいをし、見本を見せるように手で、シュー・ア・ラ・クレームを掴み、そのまま口に運ぶ。

 ナイフとフォークもあるし、このお菓子を手で食べることが何となく行儀悪いと感じていたが、確かにぼたもちなどは手で食べる。同じように考えればいい。