恋知らぬ冷徹官僚と薄幸のかすみ草

 私が久我家に嫁いでから三週間程経過した夜だった。


「若奥様。本日は若旦那様が夕餉《ゆうげ》を共にしたいとおっしゃっておられますが、いかがでしょうか」


 女中の声が部屋の外から聞こえ、声の方向を見た。おそらく、今夜食事に誘われた意味は、今夜がその日だということだ。


「わかりました。今向かいます」


 その日に備え、恥は承知で嘘も方便だと、旦那様に新しい着物が欲しいと我儘を言い、初めてデパートやらで最新下着を購入した。

 最近では、ボロボロの着物を着る私を見かねた旦那様が顔を顰め、「そんな服で家の中を歩き回るのはやめろ。買いに行け」と言ってくださったため、私は外に出れる着物を手に入れていた。

 おかげさまで上流階級が買い物をするデパートにも入ることができ、モダンな最新下着を手に入れた。

 胸も穿き物も、シルクの素材でできており、つるつる。それと、この時代では乳房バンドと呼ばれる胸を止めるものは、胸を強く締め付け苦しい。胸の形が出ないのが美しいシルエットだと言われているこの時代では、こうして締め付け、つぶすのが当然だった。

 それから下着も裾はレースが付いたものが売られており、初めて着用したのだが、本当にこれで正しいのかわからない。まるで娼婦みたいではないか、と思ったりもしたが、旦那様の前で粗末なものも見せられないと腹をくくった。