恋知らぬ冷徹官僚と薄幸のかすみ草

「百合奈がこの家でとった無礼について、想像がつき、私がこのような扱いを受けることを当然だと思いました。その上、ここで私が女中達を責め立て、旦那様に報告をすることで、また反感を買うかと思いました」


 私の回答にわかりやすく眉を顰める。


「君は、久我家に嫁いだ自覚はあるのか? どうして罰を与えない? どうしてもっと強く出ない? 反感を買うかどうかは、君の気弱さのせいではないのか?」

「おっしゃる通りです。ですが、私はここでは飾りの妻。地位も権力も何も持ちません。それに、静かに暮らしたい。それだけが私の願いにございます」


 私の言葉に旦那様は何も言わなかった。顔を顰め、見下ろし、それから溜息を吐く。


「今度からそんな目には合わせない。だが、次回こんなことがあった場合は必ず報告しろ。君の願いはどうでもいい。俺が迎え入れた妻に対してこんな扱いをすることは、俺への冒涜でもある。そんな女中を置いておけない」


 彼の面子のためだとは理解した。今回はきっと罰を免れられる。寛容な彼の対応に頭を下げ「かしこまりました」と返答した。

 私の返答を受けると、彼はこの場を離れた。