君との365日間

 「お前、夢なさすぎだろ!」

 今日から新学年、クラスも変わって友達が離れ離れになった人もいれば、一緒になった人もいて、大変なはずなのにそれを置いてけぼりにして騒がしい。そんなクラスに包まれる教室は、いつもより活気が増している。

 「転校生が来るっていうのに!もしかしたらかわいい子かもしれないだろ!?」

 机の上に手をドンと置き、ぐいぐいと近づいてくるのは一年からの友人の高畑 波留(たかはた はる)。自分の数少ない友人の一人だ。こんなにもクラスが騒がしいのは、波留の言う通り転校生が来るらしい。

 「自分は進路のことでいっぱいだし……どうやっても自分は女の子と関わることはないと思うよ」

 「進路も女も夢がないなー!転校生がかわいかったら狙ってみろよ!夢あるぜ?」

 「いやあ……。てか、波留は彼女いるんだから、そんなこと言ってたら怒られるよ?」

 「聞かれなかったらどうってことないだろ!」

 そうやって高笑いする波留。普段からこんな様子で、はたから見たら全然浮気しているように見えるかもしれないが、実は一途。
 彼女とはずっと昔からの仲のようで、もう何年にもなるのだとか。

 「波留、聞かれなかったら、なんだって?」

 「ゲッ!夏樹!今のは違くて…」

 「はいはい。いつもの言い訳はなし。全く、またかわいい子がどうたらってお話して。ほかの子だったらとっくのとうに離れていってるよ?」

 「えー!なんでだよ!転校生がかわいい子だったら誰でも嬉しいもんだろ!」

 「あのねえ、普通彼女いたらそんなこと言わないんだってば」

 波留顔をいっぱい引っ張る。「いでででで!悪かった!」という声を無視し、まだ顔を引っ張っている。
 噂をしていたら来た波留の彼女、春野 夏樹(はるの なつき)
 夏樹も自分の仲のいい友達の一人だ。波留と話していると大体夏樹もいて、よく3人で過ごしていた。前々から二人は進路も一緒らしい。ほんとうにうらやましい限りだ。自分はまだ進路が決まってないっていうのに。

 「和音、ごめんね。こんな馬鹿につき合わせちゃって」

 「いやいや……全然楽しいから大丈夫だよ」

 「和音(かずね)は進路大変なんでしょ?」

 「大変ていうのは決まってないから大変なんだけど......流れるように生きてきたから選べって言われても困っちゃうよ」

 ファイルから真っ白な進路表を取り出す。みんなと違って何にも決まっていない自分に嫌気がさす。

 「真っ白な進路表じゃん。どこに行くか悩んでるのか、選択肢が多くて決められないのか」

 「どっちも……かな?わからないんだ」

 「まあ、人生が変わるような人が現れればもしかしたらその悩みもすぐなくなるのかもね」