魔女の弟子のまあまあ楽しい2度目の人生

トマトがないと、またムチでぶたれる!

残忍な笑顔でリーナにムチをふるったり蹴ったりしてくるデイビッドとスカリーにリーナは心底恐怖を植え付けられていた。
トマトを追いかけ馬車道に飛び出そうとしたリーナを後ろから誰かが抱え込んできた。
「危ない!トマト一つで死ぬ気なの?」
やたら色気のある若い女性だった。

これがリーナの師匠、森の魔女と呼ばれるマリーン・モローとの出会いだった。

マリーンは齢200年を超えるといわれており、魔女の森に一人で住む有名な魔女だった。
ゆるくウェーブした金の髪にやや垂れ目気味の青い目とぽってりした厚めの唇を持つセクシーな女性で、グラマラスなボディは体形を強調する黒の衣装につつまれ、陰ではエロスの魔女という別名もあった。

この時のリーナがマリーンのことを知るはずもなく、彼女に怒られても、青ざめ震えながら泣きそうな顔で潰れたトマトを見つめていた。

そんな状態のリーナを見て、マリーンは訝しそうに眉をひそめた。
「強く言って悪かったわ。でも、トマトなんてまた買いなおせばいいじゃない。」
その言葉にリーナはさらに泣きそうな表情になった。
「お金がもうないの。トマトを買ってこないと、また殴られちゃう・・・」

それを聞いて、マリーンは顔をゆがめた。

痩せた身体、サイズの合っていない古いすり切れた服、何よりも子供らしくない怯えたような暗い表情。

この子、虐待されているのかしら?

よく見ると、めくれ上がったスカートの下、太ももの辺りに大人の足跡のような形の青痣が見えた。

これ、間違いなく踏まれた痕よね?

マリーンはため息をついた。
こんな子供を見つけてしまって、ほっておくわけにはいかない。
「ぶつかったのは、前を見てなかった私も悪いんだから、トマトくらい買ってあげるわよ。」

その日はマリーンにトマトを買いなおしてもらい、お礼を言ってそのまま別れた。

家に帰ると、帰って来るのが遅かったと言って結局頬をぶたれたのだが、久しぶりに人に親切にしてもらい、少し暖かい気持ちで眠ることが出来たのだった。