ポストスプリクト・ラブ


 俺達にはまだ課題があった。

 匠のグループの問題だ。それについて、デートの帰り際に、もう一度その話題について触れてみると、匠は少し考えるように夕方の空を眺めてから、
「もうちょっと、俺が考えたい」
 と呟いた。

「俺別に、あいつらのことが嫌いなわけじゃないし、安田の性格も何となくわかってる。だから、もう少し一人で考えたい」

 はっきりした匠の言葉に、強がりのような音はなく、純粋に「嫌いじゃない」と言う彼らと、向き合いたいのだろうと感じられた。俺はそんな匠に少しだけ安心して、頷いた。
 きっと大丈夫だろう。だって俺の目にも、匠と安田はちゃんと友達のように見えていたから。匠は傷ついたかもしれないけれど、それでも許せる気持ちがあって、自分で考えて答えを出したいなら、もう俺の出る幕じゃない。

「分かった。いつでも相談に乗るからね」
「ありがとな」

 俺は彼の意見に食い下がる事はしないで、一歩引いた。

 前の匠だったら投げ出しそうなことであるけれど、自分で自ら考えたいというなら、きっとそれが一番なのだ。
 俺はそばにいればいい。何かあれば支えればいい。
 昔みたいにもう、待っているだけもしたくないし、俺が今彼のためにできることは、そばに居てちゃんと必要な時に手を差し伸べることだ。

「なぁ、帰りの別れ際まで手ぇ繋いでていい?」
 不意にそうねだられて、俺は少しだけ戸惑ってしまう。そのおねだりは嬉しいけれど、やっぱりまだ少し、人前で手を繋いで歩くのは、なんとなく恥ずかしい。それが観光地ではなく、いつもの電車でも、となると、羞恥心は割り増しだ。

「電車でも? 恥ずかしくない?」
「恥ずかしくない。むしろ自慢して歩きたい」

 臆することもなく言い放つ匠に、嫌でも心が傾いてしまう。俺の意思とは真逆の方向に。
 俺は少し考えてから、繋いだままの手を軽く揺すって、
「しょうがないな」
 と、ご機嫌な彼に折れて、柔らかく手を握り返した。