空。どこまでも広がっていた。空と地面が近い。
伸ばしても届くはずないのに、手を伸ばす。
空の代わりに風だけは冷たく手を刺す。
元気な子供が野原を笑って駆け回る。
笑顔が溢れるという言葉が似合う。
あはは。また、いつか遊ぼうね。
ああ、いいな。
ありきたりなハッピーエンドで終わった本を閉じて一息つく。演出に凝った本は勿論いいけど、偶にはすっきりした普通の物語も良い。
顔を上げると、そこは青空と野原なんかじゃないただの教室だった。急なギャップにげんなりとする。
同じ制服を纏った17歳の男と女が複数人いる、狭い2-Bの教室。薄暗い蛍光灯が寂しくなってくる。
ぼんやりしていると、新担任の教師が来た。グッドタイミング。暇してたとこ。
「皆さん、始業式お疲れ様でした。新しく2-Bの担任になりました____」
微笑みを薄く浮かべながら話す義務的な自己紹介やこれからの予定等々……。つまらないのでここは聞き流す。キンキン煩くない声でBGMには最適だ。
「それでは、初めて会うひとも多いので簡単に自己紹介していきましょう。名前と好きなことくらいでいいですから……ああ、項目を付け加えても良いですよ」
おー出た。4月__始業式・入学式シーズン恒例の自己紹介タイム。大体は出席番号が早い人から言い始めるので、今回も端の生徒が最初に立った。
盛大な拍手に包まれ、まだ教室にいたことを思い出す。退屈しすぎて目を閉じてしまっていたようだ。
「ありがとうございます。では次の人……」あ?僕か。早い。もう出番だ。
椅子を下げながらいざ立つと、視線が一気に集まる。
「羽田野 夏芽です。よろしく」
端的に終わらせる。もう少し続くと思っていたのか、拍手が一拍遅れてまばらに来た。椅子に戻ろうと、ガタガタ音を立て引いた。
担任が困惑顔で、でも微笑みを続けようとしながら優しそうに話しかけてくる。
「……えっと、羽田野さん?もう終わり?好きなこととか__」
「『好きなこと』って、なんですか?」
教師の顔から笑みが消え、皆黙り、2、3人まだ馬鹿みたいに拍手をしていた人も居なくなる。あれ?去年までなら、名前と一言さえ言えばよかったんだけどな。僕、間違えました?
「……それじゃあ、次の人…」
引き途中の椅子を出して座ると、風の音がびゅーびゅーとはっきり聞こえた。夏は嫌いだけど、夏風は別に嫌いじゃない。目を閉じて思った。
伸ばしても届くはずないのに、手を伸ばす。
空の代わりに風だけは冷たく手を刺す。
元気な子供が野原を笑って駆け回る。
笑顔が溢れるという言葉が似合う。
あはは。また、いつか遊ぼうね。
ああ、いいな。
ありきたりなハッピーエンドで終わった本を閉じて一息つく。演出に凝った本は勿論いいけど、偶にはすっきりした普通の物語も良い。
顔を上げると、そこは青空と野原なんかじゃないただの教室だった。急なギャップにげんなりとする。
同じ制服を纏った17歳の男と女が複数人いる、狭い2-Bの教室。薄暗い蛍光灯が寂しくなってくる。
ぼんやりしていると、新担任の教師が来た。グッドタイミング。暇してたとこ。
「皆さん、始業式お疲れ様でした。新しく2-Bの担任になりました____」
微笑みを薄く浮かべながら話す義務的な自己紹介やこれからの予定等々……。つまらないのでここは聞き流す。キンキン煩くない声でBGMには最適だ。
「それでは、初めて会うひとも多いので簡単に自己紹介していきましょう。名前と好きなことくらいでいいですから……ああ、項目を付け加えても良いですよ」
おー出た。4月__始業式・入学式シーズン恒例の自己紹介タイム。大体は出席番号が早い人から言い始めるので、今回も端の生徒が最初に立った。
盛大な拍手に包まれ、まだ教室にいたことを思い出す。退屈しすぎて目を閉じてしまっていたようだ。
「ありがとうございます。では次の人……」あ?僕か。早い。もう出番だ。
椅子を下げながらいざ立つと、視線が一気に集まる。
「羽田野 夏芽です。よろしく」
端的に終わらせる。もう少し続くと思っていたのか、拍手が一拍遅れてまばらに来た。椅子に戻ろうと、ガタガタ音を立て引いた。
担任が困惑顔で、でも微笑みを続けようとしながら優しそうに話しかけてくる。
「……えっと、羽田野さん?もう終わり?好きなこととか__」
「『好きなこと』って、なんですか?」
教師の顔から笑みが消え、皆黙り、2、3人まだ馬鹿みたいに拍手をしていた人も居なくなる。あれ?去年までなら、名前と一言さえ言えばよかったんだけどな。僕、間違えました?
「……それじゃあ、次の人…」
引き途中の椅子を出して座ると、風の音がびゅーびゅーとはっきり聞こえた。夏は嫌いだけど、夏風は別に嫌いじゃない。目を閉じて思った。
