流れ星見つけた

 カツリ、カツリと靴音がひびいてきます。

 小さくうずくまった子供達は、祈るような気持ちでした。

 守衛の手に持ったライトの光が、暗い礼拝堂の床を行ったり来たりします。
 そして守衛が礼拝堂の真ん中を歩き、通り過ぎた時でした。
 
 足がしびれて尻もちをついた子が、イスの脚にぶつかり、ガタンと音がひびいてしまいました。

「誰ですか⁉︎」

 守衛の手にしたライトが、こちらを照らします。

「誰かいるんですか?」

 足音が近付いてきます。

(もうダメ、見つかる!)

 アンナがぎゅっと目をつむり、そう思った時、誰かが小声で言いました。

「逃げるぞ!」

 誰かがアンナの手を強くにぎりました。

「せえの!」

 アンナはぱっと目を開けると、合図と同時に手を引っ張られ、机のかげから一緒に飛び出しました。他の子も同時に腰をかがめたまま走り出しました。守衛は驚き、

「待ちなさい!」

 と叫びつつも突然のことにびっくりし、誰を追いかけていいのか戸惑いました。

 アンナは礼拝堂を出て、回廊を走り二人の子と一緒に二階の部屋にかけ込みドアを閉めました。そしてその場に身をよせあいしゃがみこみました。

 荒くなった息をととのえ、人差し指を口に当て「シーッ」とおたがい顔を見合わせます。

 夜のひんやりと冷たい空気にうす暗い部屋。心臓の音がドキドキと大きく鳴っているのが聞こえます。

 息をひそめてそっとドアに耳をあてました。他の友達がうまく逃げられたのかも心配です。

「もう出ても大丈夫かな?」

 手を握って一緒に逃げてくれた男の子に、アンナは聞きました。その時はじめて彼がマハラジャだと気づきました。

「いや、もう少し待とう。まだ近くにいるかもしれない」

 心臓がまだどくんどくんと鳴っています。

「ママや先生に知らされるんじゃないかしら。どうしよう」

 リジーが泣きそうな声で言いました。

「顔を見られてないから平気さ」

 マハラジャが答えます。

「明日、何があっても黙っていれば大丈夫」


 しばらくしたあと、アンナ達は部屋のドアを開け、廊下を見わたしました。
 廊下は何事もなかったかのように静まりかえっています。

 アンナはゆっくりドアを開け、廊下の反対側に目を向けました。

 アンナはつめたい水をかけられたように、背中がひんやりとしました。

 廊下の先には別の方向から逃げた友達が、壁を背に頭をたれて立っているのがみえました。

 その中にはドクターもハニーもいます。その向かいには……二、三人の大人の背中が見えました。ガシールの猫背の背中もみえます。

「何にも悪いことなんてしてないよ」

 昨日の自信たっぷりの誰かの言葉が、アンナの頭の中でしぼんでいきました。
 ハニーやドクターたちだけ先生に怒られているのを見て知らん顔はできません。もちろん、リジーもマハラジャも同じ思いでした。

 その後、子供達はひとつの部屋に集められました。そして大人達にたっぷり叱られ、その夜以来、夜のおしゃべりもできなくなり、もとのひっそりとした生活に戻りました。