もしもこの気持ちを青春というのなら私は青春なんていらないと思った

 話は春人君から切り出された。
「雪乃ちゃんから映画のチケット預かってない?」
「え?」
 映画のチケット指定日から三日前のことだった。
「俺と凛華ちゃん一緒に行って来てって渡したんだけど、凛華ちゃんから行くという話を聞かないからどうなったのかな? って思ったらしくて、昨日俺に連絡くれたんだ」
「あ〜……」
 あの日、雪乃から預かったチケットは、ずっとお財布の中に入っている。
 でも雪乃が雪乃ママと行くはずだったチケット。
 それを私が使っていいのか迷ったし、チケットしてい日の頃には雪乃は元気になっているはずだった。
 今は、私のことを避けている雪乃が私と春人君が映画に行くことをよく思わないかもしれない。
 それならいっそ、春人君と一緒に行かない方がいいのかもしれない。
 でもそうしてしまったら、雪乃がせっかくチケットを譲ってくれた気持ちを無駄にしてしまう。
 どうしていいかわからず、今までずるずる問題を先延ばしにしてきてしまった。
「持ってるでしょ?」
 メッと小さい子供のイタズラを注意するみたいに、可愛く睨まれる。
「持ってるけど……」
 持っていないと言っても春人君は雪乃から話を聞いている。
 悪あがきはやめよう。
「じゃあ、行こう。場所は〇〇で日にちは明後日。時間は十一時って聞いたよ。で、どこで待ち合わせする?」
 有無を言わせず、春人君はどんどん進めていく。
「えっと……」
いいかけて、
「待ち合わせは〇〇駅で、時間は九時半。駅から映画館まで歩くし、早めに行ってポップコーンとジュースを買わないと」
 息つぎがないかと思われるぐらい早口。
「えっと秋人君も一緒に行かない? 人数多い方が楽しいし」
 今春人君と二人っきりで出かけるのは、またいろんな思いに引っ張られそうで楽しめるか……。
「その日は秋、彼女とデートだから無理だって」
「え!? 秋人君、彼女いたの?」
「正確には友達以上だけど、まだ彼女じゃないって」
「え〜甘酸っぱい」
 秋人君の好きな子ってどんな子だろう?
 綺麗で優しくて知識も豊富なんだろうな〜。
 頭の中で秋人君とその女の子が並んで歩く姿が浮かぶ。
「美男美女だね」
「凛華ちゃん、見たことあるの?」
 春人君が目を丸くする。
「ないよ〜。ないけど、そんな気しない?」
 こういう時の私の勘は、なかなかの確率であっている。
「じゃあさ、見にいく? 秋とその女の子」
「え? そんなのダメだよ」
 邪魔するようなことはしたくない。
「いいじゃん。それに秋と彼女、俺たちと同じ映画の同じ上映時間のを観にいくんだよ。これは見にいくしかないだろ?」
 そんな偶然あるのだろうか? 
「こんな機会、なかなかないよ。これは行くしかない。秋と彼女のことを見守るしかないんだ」
「う〜ん。でもね〜」
 そんなの無粋な気もする。
「その女の子と秋、幼馴染なんだ。しかも俺から見て両片思いだと思う」
「え〜キュンキュンするんですけど!」
 そんな漫画みたいなこと、現実であるの? 
 女の子なら一度はそんな設定、自分にもないかなってなる。
「多分、女の子の方も秋からの告白を待ってるみたいだし、秋も告白するタイミングを探っているみたいなんだ」
「え〜なにその甘すぎる設定!」
「だろ? もうこれは二人を見守って、アシストできそうならするしかないだろ?」
 両片思いの二人。
 幸せになってほしいと思わずにいられない。
「それにさ彼女、他の男子に告白されたみたいでさ、秋焦ってるんだ」
「そりゃ焦るよ」
 ずっと好きだった女の子。
 ぽっと出の男の子に取られたくないに決まってる。
 もうこれは秋人君と彼女の幸せを見届けるしかない!
「春人君! その二人の幸せ、見届けましょう」
「だな。じゃあさ、秋達の待ち合わせ時間より前に集まろう。秋達の待ち合わせ時間と場所を探っておくよ」
「お願い」
「任せとけ」
 秋人君見守り隊の作戦会議を、近くの喫茶店ですることにした。