もしもこの気持ちを青春というのなら私は青春なんていらないと思った

 さて、春人君のダンスバトルの後。
 君と秋人君とバイバイしてから、雪乃と作戦会議が始まった。
 私の壁は平均点以上とる。
 でも平均点以上取れば確実に順位が上がってるのがわかるし、他の三人より結果は出やすい。
 雪乃曰く『量も必要だけど質の方が大切』『他の人がいう効率のいい勉強法が凛華にあってるとは限らない』とのこと。
 小説好きな人達でも好きな作家が違うことや、読みやすい本とそうでない本があるのと同じだそうだ。
 今まで雪乃に教えてもらったりもしたけど、それは雪乃の攻略法。
 私の攻略法を探す旅に出ないといけない。
 それには矛盾してるけど他の人の攻略法も少しやってみるんだって。
 誰かにヒットした攻略法。
 そこに何かヒントがあるかもしれないって。
 そこで……。

「ただいま〜」
 雪乃が雪乃宅の玄関のドアを開けると、
「「「お邪魔しま〜す」」」
 春人君、秋人君、私が後から続いた。
 雪乃の家は駅近のマンション。
 しかも春人君達も通学で通過してた駅だし、私の最寄駅から一つ。
 ファミレスだとデザートという誘惑にが多い。
 コーヒーショップだと長い時間勉強しているのは、申し訳ない。
 そこで雪乃が「じゃあ私の家でする?」と提案してくれた。
 そこでの約束事は『手土産を持ってこない』
 そんなことをしてたら出費がかさんで、大変なことになるとのこと。
 けれど勉強会の時、必ずジュースと手作りお菓子が出てくる。
 手作りお菓子はお菓子作りが趣味の雪乃のママさんからのもの。
 ママさんは「私の趣味に付き合って〜」といつも出してくれる。
 ジュースもその辺のスーパーでは見かけないものばかり。
 これもママさん曰く「我が家では誰もジュース飲まないのに欲しくなっちゃって買っちゃうの」とのこと。
 私達からしたら嬉しいお願いだけど、場所の提供とお菓子とジュース。なんだか申し訳ない。
 なのに雪乃は「今日もごめんね」と申し訳なさそうに出してくれる。
 ママさんがいうように、雪乃はお菓子やジュースに三口ぐらいしか手をつけない。
 私たちが食べているのを、ニコニコしながら見てるだけ。
 理由を聞いたら「ダイエット中」って。
 それでか。最近雪乃が痩せてきてるのって。
「一人だけダイエットって、ずるい」
 ダイエットしたいなと思いつつも、美味しすぎるママさんの手作りのマドレーヌに伸びる手が止まらない。
 雪乃といったら、ふふふと笑うだけ。
 なんだか流されてる感は否めないけど、今ここでマドレーヌを食べないなんて選択肢はない。
 最後のマドレーヌに手を伸ばそうとした時、春人君の手と私の手がぶつかった。
「「あっ……」」
 二人して同時に手を引っ込めた。
「ご、ごめん……」
 ずっと食べていたのに、最後の一個にまで手を伸ばすだなんて、食べ過ぎだと思われることをしてしまって恥ずかしい。
 可愛い女の子=少食のイメージなのに、今の私は決して少食ではない。
 あ〜、また春人君の前でやってしまった……。
 恥ずかしくて目を逸らしていると、視界に半分に割られたマドレーヌが入ってきた。
「美味しすぎて、俺も手が止まらなかったんだ。だから半分こしよ」
 上を向くと少しだけ頬を赤らめて、なんだか恥ずかしそうに春人君が言っていた。
 私が見ていた限りでは、春人君は私みたいな数、食べてなかったと思う。
 むしろ二つ目か三つ目ぐらいなはず。
 だから手が止まらなかったわけではないと思う。
 それでもそう言ってくれたのは……私に気を使ってのこと?
「半分こで食べるの小学生ぶりぐらいだから、何だか楽しいね」
 差し出された半分になったマドレーヌを受け取る前に、春人君はもう半分のマドレーヌをパクリと食べた。
「おいしいよ。凛華ちゃん、口開けて」
 口元に半分になったマドレーヌが近づいてきて言われるがまま口を開ける。
 するとポイっと春人君が持っていたマドレーヌが口の中に入ってきた。
「ね、美味しいでしょ?」
 マドレーヌを食べさせてもらい、目の前で美味しい笑みを浮かべられ、口の中も気持ちも最高級に幸せ。
「これでまた、続き頑張れそうだね」
 もう一度微笑まれ、私はいろんな意味で癒された。