もしもこの気持ちを青春というのなら私は青春なんていらないと思った

 ダンスバトルが終わり、中間考査の時期にやってきた。
 私の順位はちょうど真ん中。
 どの教科も平均点そのもの。
 努力してないワケじゃないけど、『今回はいい点とったぞ』と思っても、みんないい点でやっぱり私は平均点。
 その点雪乃は常二十位以内。
 一緒の授業受けて一緒に勉強してて、この差はなんだ? って思ってる。
「あ〜あ、また中間の季節だね」
 今は登校中。
 いつものように春人君と秋人君が、雪乃の四人での電車の中でぼやいた。
 だってテスト三週間前に突入。
 今までの授業を思い出し、あの範囲以上のものが出題されるかと思うと、気持ちが滅入ってくる。
[そお? 俺テスト好きだけど」
 秋人君の言葉に驚きすぎて、小さな私のオメメがいつものニ倍に見開かれ動きが止まった。
 脳内で言葉の意味を反芻(はんす)して、さらに見開かれる。
「頭、大丈夫?」
 雪乃はそう言いながら、本当に不思議なモノを見るように秋人君を見た。
「なに、その言い方」
 愉快そうに秋人君が大きな口を開けて笑う。
「だってね、テスト好きって人、だいたい奇人だよ」
 目の前の人に向かって奇人って……って思いながらも、確かに今までの人生で会ったことがない。
「そう? 今の自分がどこまで理解してるか数字でわかるのって面白くない?」
 秋人君が正論を言っているのはわかる。
 でもそのことと面白いは結びつかない。
「俺、暗記は得意なんだよね。理数系は春兄に教えてもらうから全く問題ないんだ」
 秋人君が白い歯を見せながらニカっと笑う。
「順位はどのぐらいなの?」
 雪乃が訊くと、秋人君は両手をパーにして十本指を見せてた。
「百位以内?」
 人数の多い有名進学校で百番以内はなかなかな順位。
 まさかと思って訊いてみたけど、
「違う違う。十位以内」
「じゅ、十位以内!?」
 変な声と共に、今日幾度目かの驚きで目を見開きすぎて、眼球が乾燥しそう。
「そう。その辺を行ったり来たり。でもさ〜五位の壁は厚くてさ、そこからなかなか先にはいけないんだ」
 残念そうにしてるけど、もはや私とは次元が違う。
「ちなみに春人君は?」
 雪乃が訊くと五本指が出てきた。
「それはもしや……五位以内?」
 そんな順位の人が私の知り合いにいるワケないだろうと思いつつ、でも春人君ならやりかねないと思う気持ちもある。
「うん。三位あたりを行ったり来たり」
 あまりの順位に目の前がクラクラする。
 成績トップの人って本当にいるの? と思ったけど、トップがいないと私みたいな中間層はいないか……と妙に納得してしまう。
「私は十位。やっぱり順位によって、厚い壁って存在するんだね」
 雪乃も二人の話に大きく頷いた。
 また話に入っていけないのは私だけ……。
「三人はすごいね。私なんて言うのが恥ずかしいよ」
 上位三人の話にはついていけないのは私だけ。
 一緒にいるのが悲しくなってくる。
「そんなことないよ。凛華も頑張ってるじゃん。順位だって伸びてるし」
 雪乃が慌ててフォローしてるのがわかる。
「そうだね」
 ここで卑屈になったら雪乃が罪悪感を感じてしまう。
 雪乃は何も悪くないのにね。
「じゃあさ、こうしない? みんな厚い壁がある。今回のテストで一番成績伸びた人のお願い聞くっていうってやつ」
 暗くなっていた雰囲気の中、元気よく提案したのは秋人君だった。
「俺は五位の壁、春兄は三位の壁、雪乃ちゃんは十位の壁。凛華ちゃんは順位を上げる。これでどう?」
 あえて私には何位の壁って言わなかったのは、秋人君の優しさなのかな?
「それ面白そう」
 雪乃は乗り気。
「モチベ上がりそうだな」
 春人君も乗り気。
「……」
 私は何も答えられなかった。
 だってそんな自信ないもん。
「ねぇ凛華、やろ〜よ〜」
「絶対楽しいって」
「やろう凛華ちゃん」
 雪乃、秋人君、春人君に言われて断ることなんてできない。
「わかった……」
 しぶしぶ答えると、
「じゃあ凛華は二十位上げるのが目標ね」
 恐ろしい目標を雪乃にたてられた。