もしもこの気持ちを青春というのなら私は青春なんていらないと思った

 バトル終了後、近くの有名コーヒーショップでの打ち上げ。
 四人席に私と雪乃が隣り合わせ。秋人君と春人君が隣り合わせ。
 本当は春人君の前に座りたかったけど、あんなにかっこいい姿を見せられた後だから直視出来なさそうだったので、秋人君の前に座った。
「あと少しだったね〜」
 春人君は決勝戦で敗者復活で勝ち上がってきたエマさんに負けて、準優勝。
「宿敵マナがダンス留学していなくなったと思ったら、妹のエマがめちゃめちゃ上手くなって帰ってきてさ〜。あの姉妹、本当にくせもの」
 甘党の秋人君が季節限定のフルーツのドリンクを飲みながら、今までを振り返る。
「エマもダンス留学するらしいから、もっと上手くなって帰ってくるだろうね」  
 春人君は定番ドリンクを飲んだ。
「マナエマ姉妹とは仲がいいの?」
 コーヒーが苦手な雪乃はチャイを飲む。
「幼稚園から中受で休むまでの間、同じダンススクールにいたんだ。マナとは同級生で二人とは幼馴染って感じかな?」
 春人君が昔を思い出すように遠い目をした。
「だからエマちゃんともあんなに仲良かったんだ〜。私てっきり彼女なのかと思ったよ」
 涼しい顔して雪乃は私が聞きたかったことを、さらっと訊いてくれる。
 私は雪乃に『ありがとう〜』と目配せした。
「違う違う。エマは甘えたでスルーするとすぐに拗ねるから、大目に見てるだけ。妹みたいな感じだから!」
 いつもの春人君は何にも動揺しなさそうなのに、今ほ春人君は慌ててて、なんだか新鮮で可愛い。
 フフフと笑ってしまうと、
「どうして笑うんだよ」
 春人君の頬が膨れた。
「なんだか焦ってるみたいな春人君、新鮮で可愛いなと思って」
 私なんかに『可愛い』って言われても、何にも感じないだろうなと思っていたのに、春人君の頬はみるみる赤くなる。
「そ、そういうことを不意打ちに言うのは……反則……」
 頬の赤さが耳までになり、とうとう俯いてしまった。
 なぜか私もつられて頬が熱くなる。
「素晴らしい。とても初々しくて素晴らしい」
 喜ぶ雪乃は春人君と私を交互に見た。
「そりゃ焦るって。そんなこと気になる子の前で……」
 何が話そうとしていた秋人君の口を、春人君はサッと両手で塞いだ。
「秋人の言ったことは……気にしないで」
 春人君には珍しく、ごにょごにょと話す。
「フフフ。そうする」
 何かを見守るように雪乃は微笑んだ。
 春人君が気になる子か〜。
 あの春人君の何かに引っかかる子ってどんな子なのかな?
 秋人君と頬を赤らめたままの春人君と話す雪乃をチラリと見る。
 春人君の気になる子は、きっと雪乃みたいに綺麗な子。
 春人君たちの話にもついていける、物知りな子。
 何も知らなくて話がわからない私と三人の間にある壁は、少しずつ厚くなっていってるのがわかった。