もしもこの気持ちを青春というのなら私は青春なんていらないと思った

 ママにメイクを教えてもらった。
 貯めてたお小遣いで、美容院でストパーとトリートメントをしてもらった。
 雪乃全コーデの服と靴と鞄も買った。
 並行して食事と運動とストレッチのダイエットもした。
 当日は今日は休みの日だから、ナチュラルメイクをした。
 本当はネイルもしたかったけど、気合いが入り過ぎなのがバレてしまいそうで、やめておいた。
 そんなことをしていたら、あっという間に春人君のダンスバトルの日になった。

 待ち合わせは会場最寄りの駅。
 いつもは制服だからみんな一緒だけど、私服はセンスが問われる。
 雪乃が選んだ服装だから可愛いんだけど、着ているのが私だからな〜。
 浮いてないかな〜。
 少し早く着いた駅の改札で待っていると、いろんな人からチラチラ見られる。
 ヒソヒソと話し声もする。
 やっぱり変だったのかな……。
 不安で俯き、今すぐ帰りたくなった。
「お〜い凛華ちゃ〜ん」
 遠くから秋人君の声がした。
 顔を上げて姿を探そうと声の方を見ると、探さなくてもわかる。
 そこにはキラキラと輝いている、秋人君と春人君がいた。
 秋人君はローファーに薄手のオーバーサイズのニットを、大きめのデニムにインしていて、秋人君っぽいコーディネート。
 春人君っぽいといえば綺麗目なのかな? なんて想像してたけど、今日の春人君は違った。
 オーバーサイズの白いロンTをこげちゃの太めスラックスの中にインし、ブランド定番ロゴ入りのハンチングを被っている。
 ハンチングを被っているから寝癖はわからないけど、多分今日は寝癖なしな気がする。
 だってオーラが違う。
 いつものほんわりした天然優しいオーラはない。
 足長! 顔小さい!
 ただただかっこいい
 もうそれしかない。
「わぁ〜、今日の凛華ちゃん可愛〜」
 駆け寄ってきた秋人君が私の周りを一周回りながら、トータルコーデを見る。
 お世辞だと言うことは分かってる。
 でもとりあえずおしゃれ秋人君に褒められて、嬉しい。
 一生懸命頑張ったんだもん。
 春人君にはどう見えてるのかな?
 秋人君から遅れて春人君はやってきた。
 なぜって?
 パスをどこにしまったのか忘れてしまったのか、改札直前でいろんなところを探し回っていたから。
 服装はいつもと違うけど、可愛く少し抜けてるところはいつもと一緒でホッとした。
「おはよ……」
 それだけ言って、春人君は黙ってしまった。
 やっぱり変だったかな?
 秋人君は女の子を褒めるのが上手そうだから可愛いって言ってくれたけど、春人君はお世辞とか苦手っぽいもんね……。
 一軍じゃない私が可愛くしようと頑張ったら、変なだけか……。
 メイクを教えてくれたママにも、一緒に服を選んでくれた雪乃にも申し訳ない。
「変……だよね……」
 分かっていたけど、やっぱり変だと認めざる負えなくて、涙が浮かんでくる。
 そんな姿見られたくなくて、俯くと、
「すごくいい!」
 思いもよらない春人君の言葉が、頭の上から降ってきた。
「すごくいい! 女の子の可愛いとか綺麗とか俺にはよくわからないけど、すごくいい」
「え?」
 聞き間違いかと思って、顔を上げた。
「可愛い。今日はすごく可愛い。今日は!」
 顔を覗き込まれた。
「春兄、その言い方じゃあ、いつもは可愛くないみたいじゃん! 凛華ちゃん気にしないで。春兄はそう言う意味で言ったんじゃないから。いつも可愛いよ」
 慌てた様子の秋人君がフォローに入ってくれたけど、いつも可愛くなくて今日可愛いなら嬉しい。
 だって今日はちゃんとメイクしてるんだもん。
 頑張って1人でメイクしたんだもん。
 顔や耳が熱くなっていく。
「いつもはみんなと同じ制服だけど、今日のその服装はよく似合ってる」
 春人君はいろんな方向から見てくれる。
「だから春兄。そんなこと言ったら、いつもは可愛くないみたいに聞こえるの! ごめんね凛華ちゃん。春兄言葉知らなくて……」
 私と春人君の間に秋人君が入り、春人君が何か発言するたびに、フォローしてくれた。
 秋人君の気遣いも嬉しかったけど、春人君の言葉も嬉しかった。
 いつもはどうとか言うことはどうでもいい。
 今日はとにかく頑張った。
 そのことに触れてくれたのが嬉しかった。
「あ……ありがとう……」
 緊張でモゴモゴ言ってしまった。
 そんな私に対して春人君は、
「いつも可愛いけど、今日は特別可愛いね」
 極上の笑みと共に、何本目かの弓矢の矢を私の心臓にブッ刺した。