月曜日。
小林はクラスメイトに囲まれていた。
「ちょっと舞。せっかくあげたチケットを無駄にするとは、いい度胸してるじゃない」
「はい。すみません」
「結果報告次第では地の果てまで殴り飛ばすからね?」
「はい…。では結果を報告させていただきます。私、小林舞は吉澤たけると付き合うことができましたー!
うわー!と歓声が上がる
パンっ!とクラッカーのなる音までした。
「え?クラッカー?」
「そう!朝急いで買ってきたんだーお祝い用と狙撃用で使えるように」
「狙撃…」
「とにかく付き合えたんだね!どっちから?」
矢継ぎ早の質問にたじたじの小林。
「どこまでしたの?」
「どこまでって?」
「言わなくてもわかるでしょ?あの雰囲気だもんきっといくとこまでいったんだよ」
「あ、うん」
「えぇー!」
「ぎゅーはした」
全員が崩れ落ちる。
「うぶーっ!」
「2人きりだったんでしょ?なんなのあんたら」
「まぁこれでこそ舞って感じだけどね」
昼休み。
屋上では小林と吉澤が2人でご飯を食べていた。
「どう?クラスでなんか聞かれた?」
「俺は他の人に言ってないからバレてないよ」
「え?!なんで!私じゃ不満?」
「そういうことじゃないよ。いじられるのめんどくさいんだ。あと秘密にしてた方が独占してる感じがあっていいじゃん?」
吉澤は顔を赤らめる。
「なにそれー!かわいいー!」
今まではこういうことを心の中でしか思えなかったが口に出ししかも相手に触れることができる。付き合うってなんて素晴らしいんだと小林は誇らしく思っていた。
「舞は?なんか言われたの?」
「うん。チケットのこと責められちゃった。あはは」
「それに関しては舞が悪いしな」
「ねー!」
他愛もない会話が続く。
「そういえばさ、7時間目の道徳で将来の夢シートってやつ書くらしいよ」
「将来の夢シート?」
「そう。なんか自分がなりたい職業とか書くんじゃない?よくわかんないけど」
「ふーん。舞は?なんかなりたいのあるの?」
「私は美術系かなー」
普段は能天気で何も考えていなさそうな小林だが、美術の世界に入り込むとそれは別人だった。小林の描く絵は日本ではかなり有名であり、高校2年生ながら複数の大学から推薦の声がかかっていた。
「そうだよなー美術に関しては天才だもんなー」
「何それバカにしてんの?」
「そうじゃねぇよ」
「たけるは?なんかあるの?」
「俺は教師かなー昔から子供と関わるの好きだし。まだ漠然としてるけどね」
「いいじゃん!子供に人気でそうな顔してるもんね」
キーンコーンカーンコーン。
「あ、チャイム」
「じゃあまた部活でね!」
5、6時間目の眠たい時間を乗り換え、月曜日のみ行われる7時間目の道徳の時間になった。
「よーし。全員揃ってるかー?今日は珍しく授業やるぞー」
道徳とはいえやることがなく、いつもこの時間は雑談の時間や学校祭などの行事があればその準備の時間に当てられていた。
「えぇー」
クラス中から批判の声が上がる。
「えぇーじゃない!もともと授業の時間なんだからこれが普通だぞー」
とはいえ担任もめんどくさそうだ。
「今日は将来の夢シートを書いてもらう。これを元に面談したり、今後の進路を決める参考にしたりしようと思う。なるべく全部埋めてくれ」
吉澤は将来なりたい職業に教師と書き、理由の欄に子供と関わる仕事がしたいと書いた。ここまでは余裕だったが、その先からペンが動かなくなった。
「その職業に就いたその先の未来のあなた…?」
何気ない質問だったがこの質問が吉澤を狂わせていく。こんなことは考えたことがなかった。というより教えてもらったことがなかった。今までは将来の夢を持ちなさい、夢は大きい方がいいと言われ夢を持っているだけで褒められてきた。しかしその夢が叶った後はどうだ?自分の理想とした形の教師になれているのだろうか?それとも自分の気持ちを押し殺して教師をしているのだろうか?自分の考えが自分の将来の不安を煽る。「今」だけを見てきたからこそ安定していた人生も「未来」を見つめるとこんなにも足元が不安定になるとは思ってもいなかった。
「よし。そこまでー書けたかー?まあすぐ終わる時間だから集めるぞー」
吉澤は何も書くことができずにそのままプリントを提出した。
その日の部活は完全に活力を失っていた。ピッチング練習では身体は動いているが、上手く力が入ってる気がしなかった。
「おい。吉澤大丈夫か?」
「はい。ちょっと疲れが出てるだけだと思います。大丈夫です」
「今月は練習試合も多いし、しっかり休めよ」
自分では周りに出しているつもりはなかったが、かなり気を使わせていたらしい。
「しっかりしなきゃ…」
帰り道。
「大丈夫?」
「ん?何が?」
「誤魔化そうとしても無理だよ。彼女を欺こうなんて不可能なんだからね」
「ちょっと疲れてるだけだよ。大丈夫!心配しないで」
どう考えても疲れてるだけではないとわかっていたが、これ以上責めるとかえって彼をおかしくさせるかもしれない。小林はそれ以上は質問することなくあえて世間話を続けた。
「じゃあね。また明日」
「うん…たける!しっかり休んでね!」
「うん。ありがとう!」
小林はクラスメイトに囲まれていた。
「ちょっと舞。せっかくあげたチケットを無駄にするとは、いい度胸してるじゃない」
「はい。すみません」
「結果報告次第では地の果てまで殴り飛ばすからね?」
「はい…。では結果を報告させていただきます。私、小林舞は吉澤たけると付き合うことができましたー!
うわー!と歓声が上がる
パンっ!とクラッカーのなる音までした。
「え?クラッカー?」
「そう!朝急いで買ってきたんだーお祝い用と狙撃用で使えるように」
「狙撃…」
「とにかく付き合えたんだね!どっちから?」
矢継ぎ早の質問にたじたじの小林。
「どこまでしたの?」
「どこまでって?」
「言わなくてもわかるでしょ?あの雰囲気だもんきっといくとこまでいったんだよ」
「あ、うん」
「えぇー!」
「ぎゅーはした」
全員が崩れ落ちる。
「うぶーっ!」
「2人きりだったんでしょ?なんなのあんたら」
「まぁこれでこそ舞って感じだけどね」
昼休み。
屋上では小林と吉澤が2人でご飯を食べていた。
「どう?クラスでなんか聞かれた?」
「俺は他の人に言ってないからバレてないよ」
「え?!なんで!私じゃ不満?」
「そういうことじゃないよ。いじられるのめんどくさいんだ。あと秘密にしてた方が独占してる感じがあっていいじゃん?」
吉澤は顔を赤らめる。
「なにそれー!かわいいー!」
今まではこういうことを心の中でしか思えなかったが口に出ししかも相手に触れることができる。付き合うってなんて素晴らしいんだと小林は誇らしく思っていた。
「舞は?なんか言われたの?」
「うん。チケットのこと責められちゃった。あはは」
「それに関しては舞が悪いしな」
「ねー!」
他愛もない会話が続く。
「そういえばさ、7時間目の道徳で将来の夢シートってやつ書くらしいよ」
「将来の夢シート?」
「そう。なんか自分がなりたい職業とか書くんじゃない?よくわかんないけど」
「ふーん。舞は?なんかなりたいのあるの?」
「私は美術系かなー」
普段は能天気で何も考えていなさそうな小林だが、美術の世界に入り込むとそれは別人だった。小林の描く絵は日本ではかなり有名であり、高校2年生ながら複数の大学から推薦の声がかかっていた。
「そうだよなー美術に関しては天才だもんなー」
「何それバカにしてんの?」
「そうじゃねぇよ」
「たけるは?なんかあるの?」
「俺は教師かなー昔から子供と関わるの好きだし。まだ漠然としてるけどね」
「いいじゃん!子供に人気でそうな顔してるもんね」
キーンコーンカーンコーン。
「あ、チャイム」
「じゃあまた部活でね!」
5、6時間目の眠たい時間を乗り換え、月曜日のみ行われる7時間目の道徳の時間になった。
「よーし。全員揃ってるかー?今日は珍しく授業やるぞー」
道徳とはいえやることがなく、いつもこの時間は雑談の時間や学校祭などの行事があればその準備の時間に当てられていた。
「えぇー」
クラス中から批判の声が上がる。
「えぇーじゃない!もともと授業の時間なんだからこれが普通だぞー」
とはいえ担任もめんどくさそうだ。
「今日は将来の夢シートを書いてもらう。これを元に面談したり、今後の進路を決める参考にしたりしようと思う。なるべく全部埋めてくれ」
吉澤は将来なりたい職業に教師と書き、理由の欄に子供と関わる仕事がしたいと書いた。ここまでは余裕だったが、その先からペンが動かなくなった。
「その職業に就いたその先の未来のあなた…?」
何気ない質問だったがこの質問が吉澤を狂わせていく。こんなことは考えたことがなかった。というより教えてもらったことがなかった。今までは将来の夢を持ちなさい、夢は大きい方がいいと言われ夢を持っているだけで褒められてきた。しかしその夢が叶った後はどうだ?自分の理想とした形の教師になれているのだろうか?それとも自分の気持ちを押し殺して教師をしているのだろうか?自分の考えが自分の将来の不安を煽る。「今」だけを見てきたからこそ安定していた人生も「未来」を見つめるとこんなにも足元が不安定になるとは思ってもいなかった。
「よし。そこまでー書けたかー?まあすぐ終わる時間だから集めるぞー」
吉澤は何も書くことができずにそのままプリントを提出した。
その日の部活は完全に活力を失っていた。ピッチング練習では身体は動いているが、上手く力が入ってる気がしなかった。
「おい。吉澤大丈夫か?」
「はい。ちょっと疲れが出てるだけだと思います。大丈夫です」
「今月は練習試合も多いし、しっかり休めよ」
自分では周りに出しているつもりはなかったが、かなり気を使わせていたらしい。
「しっかりしなきゃ…」
帰り道。
「大丈夫?」
「ん?何が?」
「誤魔化そうとしても無理だよ。彼女を欺こうなんて不可能なんだからね」
「ちょっと疲れてるだけだよ。大丈夫!心配しないで」
どう考えても疲れてるだけではないとわかっていたが、これ以上責めるとかえって彼をおかしくさせるかもしれない。小林はそれ以上は質問することなくあえて世間話を続けた。
「じゃあね。また明日」
「うん…たける!しっかり休んでね!」
「うん。ありがとう!」
