校長先生が現れてからこんなにも物事がスムーズに進むのかと感心する程スピーディーにいろいろなことが決まっていった。
まず最初に今日は臨時で学校が休校になったことだ。
校長先生の問いかけに対し即座に返事をすることのできなかった山下先生は、教壇の上でだまり続けることしかしなかった。それを見かねた校長先生は一度体育館に集まった生徒を教室へと戻す指示を出す。その収集がつかなかったのか、本日は臨時で休校となり、ほとんどの生徒は帰されることとなった。
収集がつかないというのは様々な意味合いがあり、はじめに生徒からの質問が多く上がってしまったということだ。付き合っただけで停学処分になるのか。生徒会長と副会長が付き合っているだなんて噂はこの学校の生徒なら知っていたことだ。それを今更問題にするのはおかしいんじゃないか。という質問だ。
教師陣は緊急職員会議を開くことにしたのだが、それではその間生徒はどうするのかという問題も発生したため、本日は臨時休校とし生徒を帰すことになったようだ。
だが例外はある。
俺と夜一、そして笠原先輩は帰されることはなく、職員室にある応接室で待機をすることとなった。
二つ目に決まったことは御薬袋先輩と式神先輩の停学処分が白紙になったことだ。
というのも、そもそも御薬袋先輩と式神先輩は停学処分にはなっておらず、自宅待機もしくは自宅謹慎だったらしい。
山下先生の力だけでは生徒を停学処分にすることはできないらしく、臨時の全校集会では虚勢を張ったのかどうかは山下本人にしかわからないが、御薬袋先輩と式神先輩が無実となったのは本当に嬉しい。
「あの、俺たちは帰してはくれないんですか?」
俺は職員室にある応接室で、前に座っている校長先生に話しかける。
校長先生はソファからゆっくりと立ち上がると、俺を含めた夜一と笠原先輩の三人に頭を下げた。
「この度は申し訳ございませんでした」
その深々と下げられた頭と大人からの敬語に俺はひどく動揺をしたが、そんな状況でも笠原先輩は冷静に返事をする。
「つまり校長も知らぬところで御薬袋と式神は処分を受けてたってことですか?」
「ええ。そうです…………。山下先生もなにか言ったらどうですか?」
その校長先生からの問いかけに山下先生は下を向いたままだった。
「俺への当てつけだったんですか?」
気がつくと俺はそんなことを口走っていた。
それを聞いた山下先生は下を向いたまま舌打ちをした。その音はこの場にいる全員に聞こえるほどのものであった。
「お前が生徒会になんて入らなければ……」
「……え?」
「お前が生徒会に入るからだろうが! 生徒会には優秀な生徒が入るべきだ! それを何を
あの二人を唆したのかわからないが、お前のような生徒が推薦を貰うなどありえない!」
「やめないか!」
山下先生の理不尽な怒りに、校長先生はその声をかき消す勢いで山下先生を叱る。
山下先生は興奮状態で瞳孔が開きっぱなしであり、校長先生がいなければその勢いに押されてする必要のない謝罪をしていたに違いない。
だが校長先生と笠原先輩が冷静に対応してくれているおかげで、いわれのないことで謝罪をする必要はないようだ。
「なら標的は俺で良かったじゃないですか……! 先輩方を巻き込まないでください!」
「……俺は生徒会顧問だぞ。この学校を代表する優秀な生徒のみを集めた組織が生徒会だ! それをお前が現生徒会を誑かした結果がこれだろうが!」
「俺は——」
俺の反論を遮ったのは校長先生であった。
「私は佐藤くんが生徒会に入ったのは正解だと思いますよ。彼が生徒会役員になってからというものの生徒会の仕事のスピードはより早くなったと報告を受けております」
「それは! 人数が増えたなら仕事が早くなるのは当然でしょう!」
「たしかにそうかも知れませんが、それは三人でやっていた場合だと思いますよ。最近の書類の仕分け作業は佐藤くん一人で対応されているそうじゃありませんか? 山下先生は生徒会顧問でありながらそんなこともご存知でなかったのですか?」
「うっ……! わ、私も忙しいんですよ。毎日生徒会に顔を出せるわけではありませんので……」
「そうですか。なら生徒会顧問から山下先生を外しましょう」
「え?」
「お忙しいのでしょう? なら外しましょう。幸いにも本校にはたくさんの教師がおりますし、私が顧問を担っても問題ありませんよ」
「い、いえ! 生徒会顧問は——」
「生徒会顧問が何ですか? それに勝手に臨時で全校集会を開くような問題教師を生徒会の顧問として置き続けることはできませんよ」
聞いてはいけない話を目の前でしている気がする。
そう思っているのは俺だけではないようで、笠原先輩も夜一も目の前の光景から目を背けているようだ。
しかし背けるだけではなく、ちゃんと思うところもあるようで、ずっと口を開かなかった夜一がゆっくりと言葉を口にする。
「もう俺たちは帰ってもいいですか? 大人のそういう話。大変不愉快です」
▽▽
夜一の一言で無事解放された俺は今夜一に手を引かれながら、下校をしている。
俺の手を掴む夜一の力は強く、簡単に振りほどけそうにない。
いや、毛頭振りほどくつもりもないのだが。
「よ、夜一!」
「……」
「ちょ、ちょっとだけ痛い……です」
それを聞いた夜一はパタリと歩みを止める。
俺の手を掴む力は弱まったが、それでも俺の手を離すことはなかった。
「ご、ごめん」
「全然! 俺も手は繋いで……いたいし」
「うん、俺も繋いでいたい」
「な、なあ……。俺たち、付き合い始めたん……だよな?」
夜一の手を握る力がまた強くなる。
「俺は、そう思ってる」
「……よかった。俺も夜一と付き合ってると思ってる」
「……本当にいいのか?」
「夜一が俺のことを好きなように、俺も夜一のコト好き、だから……。てか、マジでごめん」
「……え?」
俺は夜一の目をしっかりと見たうえで懺悔を行う。
その間も手を離すことはなく、むしろ夜一の手を上から包み込むように手を添える。
「あんな全校生徒の前で告白しちゃって……。明日から学校で居場所なくなるかもだし……。あることないこと言われるかもしれないし」
「……もしかして、そんなコト気にしてたのか?」
「そんなことって!」
「禄助はやっぱり優しいね。好きになってよかったよ」
俺は直球で告げられる愛に頬を赤く染める。
さっきまで不安だった気持ちがパァっと晴れていくような感覚だ。
「俺は禄助といられるだけでいいんだよ。他の何を犠牲にしてもいいと思える相手だからね」
「え、それ……」
「え、なに?」
「御薬袋先輩も、おんなじこと言ってたわ」
「……マジか」
お互いに顔を見合わせ、笑いあった。
あぁ、夜一を好きになってよかった。そう思えた瞬間だった。
▽▽
「えー、俺と業を助けてくれてありがとう! という感謝の気持ちと、そして新体制となった生徒会にかんぱーい!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
臨時全校集会事件から一週間が過ぎた放課後。
俺たちは生徒会室にいた。
生徒会室に居るのは御薬袋先輩、式神先輩、笠原先輩、校長先生と夜一、そして俺の六人だ。
実はこの一週間で生徒会が大きく変わったわけではない。生徒会顧問が山下先生から校長先生へと変わったこと以外に変化はないのだ。
それでも夜一と笠原先輩が生徒会室にいるのにはちゃんと理由があり、御薬袋先輩が乾杯の音頭を取った冒頭でも言っていたが、全校集会で御薬袋先輩と式神先輩を守ってくれた二人にお礼を伝えたいということで、今回この生徒会新体制会に呼んだようだ。
ちなみにこの生徒会新体制会は全て校長先生のポケットマネーから出ているようで、ジュースやらお菓子やらの準備は全て校長先生が行ってくれたらしい。
俺たちは校長先生にお礼を告げてから、机いっぱいに広がっているお菓子をつまんでいく。
「いやぁ、ほんとにありがとな! しかも禄助くんに至っては公開告白したんだって?」と御薬袋先輩が紙コップに入ったオレンジジュースを一気に飲み干すと、ニヤつきながら俺に問いかけてきた。
「それ僕も見たかったんだよ……。自宅謹慎とかなってなければ……」と式神先輩は謹慎になったのはお前のせいだけどな! と言わんばかりに御薬袋先輩のことを睨みつけたあと、気になるといった視線を俺に向けてくる。
「いや、恥ずいですって!」そう笑ってごまかそうとするが、笠原先輩が「感動的だったぞ」と追い打ちをかけてくる。
本当に恥ずかしいのでやめてほしい。
しかし俺が口を割らないと気づくや否や、標的を夜一に変えてきた。
「夜一くん、だっけ? 夜一くんは禄助くんの何処が好きになったの?」
「自分をしっかりと持っているところ、ですかね。思ったことをすぐ口にしちゃうところとか嘘がつけないんだなって思うと可愛いですよ」
「せっかくの菓子が更に甘くなるだろうが」
御薬袋先輩からの問いかけに答えた夜一であったが、惚気に耐えきれなかったのか笠原先輩はため息交じりに嫌味を言う。
それを夜一は笑って交わしながら「お菓子は甘いほうが美味しいんですよ」と微笑んだ。
そんな空気感に耐えきれなくなった俺は別の話を振る。
「夜一は本当に生徒会に入らないのか? 笠原先輩もよかったんですか?」
実はあの事件以降、校長先生からの推薦で夜一と笠原先輩に生徒会に入らないか? という勧誘があったらしいのだが、二人はそれを丁重にお断りをしたらしい。
夜一は塾があるからという理由でお断り。
笠原先輩はバイトもあるし、それに生徒会には向いていないという理由でお断りをしたようだ。
一応夜一からは事前に相談を受けたのだが、夜一のやりたいようにするべきだと伝えた結果、今回がお見送りとなったらしい。
塾を優先するところは実に夜一らしいと俺は思う。
「まぁ塾があるしね。それにずっと禄助と一緒だと俺の身がもたないよ」
「俺も大丈夫だ。それに今はお前たち三人の生徒会の方が良いと思うぞ。今大注目の三人だしな」
笠原先輩に悪気は無いのだろうが大注目というのは事実なので、恥ずかしさで胸が締め付けられる。
というのも、全校集会で告白をし、成功をさせた俺は今や時の人となっている。
休校が終わり、翌日登校するときは心臓が今までにないほど波打っていたのを今でも覚えている。
クラスでも同性同士の恋愛に否定的な意見や考えを持っている生徒は少なからずいた。そのため学校の門をくぐるのが怖かったのだ。
しかし俺の予想は良い意味で裏切られた。
教室に入った瞬間に鳴らされたクラッカーと祝福の言葉に俺は安堵をしたのだ。
「マジですげーよ! 全校生徒の前で告白とかさ!」
「私泣いちゃったもんね! 本当におめでとう」
「変な言葉投げてマジでごめん! 俺本当に二人の事応援してるわ!」
そんな言葉を投げてくれたのは、何も同じクラスの生徒だけではない。
移動教室や合同授業の時など他の一年生からも声をかけられたり、何か飲み物を買おうかと自動販売機を使っていると後ろから先輩方から「かっこよかったよ!」と声をかけてくれることもあった。
それは俺だけではないようで、噂が本当になった御薬袋先輩や式神先輩は同学年から質問攻めに合っているという噂を耳に挟んだ。
そんな俺たちは放課後、生徒会室に集まり顔を見合わせるや否や、ため息交じりに笑いあったのを覚えている。
「まぁそうだな。一時は俺たち三人で頑張ろうか!」
「私もサポートしますからね」
校長も微笑みながら、そう語りかけていた。
「それにしてもカップルが二組もこの空間に居るのは、なんだか面白いですね。と言うわけでこちらをどうぞ」
そういうと校長先生は御薬袋先輩と式神先輩。夜一と俺に一枚ずつ遊園地のチケットを手渡してきた。
「笠原くんにはこれね」
カップルにしか渡さないと思っていたが、笠原先輩には別のものを用意していたようで図書カードを手渡していた。
「え、いいんですか?」
「もちろんだよ。あ、笠原くんも遊園地がよかった?」
「まさか……! こんな二組と一緒に行ったら惨めな思いをするだけですよ。図書カードの方が何十倍も嬉しいです。ありがとうございます!」
「それはよかった。」
校長先生が喜んでいるのを尻目に、遊園地のチケットを渡された組は顔を見合わせる。
これってダブルデートってことですか!!
まず最初に今日は臨時で学校が休校になったことだ。
校長先生の問いかけに対し即座に返事をすることのできなかった山下先生は、教壇の上でだまり続けることしかしなかった。それを見かねた校長先生は一度体育館に集まった生徒を教室へと戻す指示を出す。その収集がつかなかったのか、本日は臨時で休校となり、ほとんどの生徒は帰されることとなった。
収集がつかないというのは様々な意味合いがあり、はじめに生徒からの質問が多く上がってしまったということだ。付き合っただけで停学処分になるのか。生徒会長と副会長が付き合っているだなんて噂はこの学校の生徒なら知っていたことだ。それを今更問題にするのはおかしいんじゃないか。という質問だ。
教師陣は緊急職員会議を開くことにしたのだが、それではその間生徒はどうするのかという問題も発生したため、本日は臨時休校とし生徒を帰すことになったようだ。
だが例外はある。
俺と夜一、そして笠原先輩は帰されることはなく、職員室にある応接室で待機をすることとなった。
二つ目に決まったことは御薬袋先輩と式神先輩の停学処分が白紙になったことだ。
というのも、そもそも御薬袋先輩と式神先輩は停学処分にはなっておらず、自宅待機もしくは自宅謹慎だったらしい。
山下先生の力だけでは生徒を停学処分にすることはできないらしく、臨時の全校集会では虚勢を張ったのかどうかは山下本人にしかわからないが、御薬袋先輩と式神先輩が無実となったのは本当に嬉しい。
「あの、俺たちは帰してはくれないんですか?」
俺は職員室にある応接室で、前に座っている校長先生に話しかける。
校長先生はソファからゆっくりと立ち上がると、俺を含めた夜一と笠原先輩の三人に頭を下げた。
「この度は申し訳ございませんでした」
その深々と下げられた頭と大人からの敬語に俺はひどく動揺をしたが、そんな状況でも笠原先輩は冷静に返事をする。
「つまり校長も知らぬところで御薬袋と式神は処分を受けてたってことですか?」
「ええ。そうです…………。山下先生もなにか言ったらどうですか?」
その校長先生からの問いかけに山下先生は下を向いたままだった。
「俺への当てつけだったんですか?」
気がつくと俺はそんなことを口走っていた。
それを聞いた山下先生は下を向いたまま舌打ちをした。その音はこの場にいる全員に聞こえるほどのものであった。
「お前が生徒会になんて入らなければ……」
「……え?」
「お前が生徒会に入るからだろうが! 生徒会には優秀な生徒が入るべきだ! それを何を
あの二人を唆したのかわからないが、お前のような生徒が推薦を貰うなどありえない!」
「やめないか!」
山下先生の理不尽な怒りに、校長先生はその声をかき消す勢いで山下先生を叱る。
山下先生は興奮状態で瞳孔が開きっぱなしであり、校長先生がいなければその勢いに押されてする必要のない謝罪をしていたに違いない。
だが校長先生と笠原先輩が冷静に対応してくれているおかげで、いわれのないことで謝罪をする必要はないようだ。
「なら標的は俺で良かったじゃないですか……! 先輩方を巻き込まないでください!」
「……俺は生徒会顧問だぞ。この学校を代表する優秀な生徒のみを集めた組織が生徒会だ! それをお前が現生徒会を誑かした結果がこれだろうが!」
「俺は——」
俺の反論を遮ったのは校長先生であった。
「私は佐藤くんが生徒会に入ったのは正解だと思いますよ。彼が生徒会役員になってからというものの生徒会の仕事のスピードはより早くなったと報告を受けております」
「それは! 人数が増えたなら仕事が早くなるのは当然でしょう!」
「たしかにそうかも知れませんが、それは三人でやっていた場合だと思いますよ。最近の書類の仕分け作業は佐藤くん一人で対応されているそうじゃありませんか? 山下先生は生徒会顧問でありながらそんなこともご存知でなかったのですか?」
「うっ……! わ、私も忙しいんですよ。毎日生徒会に顔を出せるわけではありませんので……」
「そうですか。なら生徒会顧問から山下先生を外しましょう」
「え?」
「お忙しいのでしょう? なら外しましょう。幸いにも本校にはたくさんの教師がおりますし、私が顧問を担っても問題ありませんよ」
「い、いえ! 生徒会顧問は——」
「生徒会顧問が何ですか? それに勝手に臨時で全校集会を開くような問題教師を生徒会の顧問として置き続けることはできませんよ」
聞いてはいけない話を目の前でしている気がする。
そう思っているのは俺だけではないようで、笠原先輩も夜一も目の前の光景から目を背けているようだ。
しかし背けるだけではなく、ちゃんと思うところもあるようで、ずっと口を開かなかった夜一がゆっくりと言葉を口にする。
「もう俺たちは帰ってもいいですか? 大人のそういう話。大変不愉快です」
▽▽
夜一の一言で無事解放された俺は今夜一に手を引かれながら、下校をしている。
俺の手を掴む夜一の力は強く、簡単に振りほどけそうにない。
いや、毛頭振りほどくつもりもないのだが。
「よ、夜一!」
「……」
「ちょ、ちょっとだけ痛い……です」
それを聞いた夜一はパタリと歩みを止める。
俺の手を掴む力は弱まったが、それでも俺の手を離すことはなかった。
「ご、ごめん」
「全然! 俺も手は繋いで……いたいし」
「うん、俺も繋いでいたい」
「な、なあ……。俺たち、付き合い始めたん……だよな?」
夜一の手を握る力がまた強くなる。
「俺は、そう思ってる」
「……よかった。俺も夜一と付き合ってると思ってる」
「……本当にいいのか?」
「夜一が俺のことを好きなように、俺も夜一のコト好き、だから……。てか、マジでごめん」
「……え?」
俺は夜一の目をしっかりと見たうえで懺悔を行う。
その間も手を離すことはなく、むしろ夜一の手を上から包み込むように手を添える。
「あんな全校生徒の前で告白しちゃって……。明日から学校で居場所なくなるかもだし……。あることないこと言われるかもしれないし」
「……もしかして、そんなコト気にしてたのか?」
「そんなことって!」
「禄助はやっぱり優しいね。好きになってよかったよ」
俺は直球で告げられる愛に頬を赤く染める。
さっきまで不安だった気持ちがパァっと晴れていくような感覚だ。
「俺は禄助といられるだけでいいんだよ。他の何を犠牲にしてもいいと思える相手だからね」
「え、それ……」
「え、なに?」
「御薬袋先輩も、おんなじこと言ってたわ」
「……マジか」
お互いに顔を見合わせ、笑いあった。
あぁ、夜一を好きになってよかった。そう思えた瞬間だった。
▽▽
「えー、俺と業を助けてくれてありがとう! という感謝の気持ちと、そして新体制となった生徒会にかんぱーい!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
臨時全校集会事件から一週間が過ぎた放課後。
俺たちは生徒会室にいた。
生徒会室に居るのは御薬袋先輩、式神先輩、笠原先輩、校長先生と夜一、そして俺の六人だ。
実はこの一週間で生徒会が大きく変わったわけではない。生徒会顧問が山下先生から校長先生へと変わったこと以外に変化はないのだ。
それでも夜一と笠原先輩が生徒会室にいるのにはちゃんと理由があり、御薬袋先輩が乾杯の音頭を取った冒頭でも言っていたが、全校集会で御薬袋先輩と式神先輩を守ってくれた二人にお礼を伝えたいということで、今回この生徒会新体制会に呼んだようだ。
ちなみにこの生徒会新体制会は全て校長先生のポケットマネーから出ているようで、ジュースやらお菓子やらの準備は全て校長先生が行ってくれたらしい。
俺たちは校長先生にお礼を告げてから、机いっぱいに広がっているお菓子をつまんでいく。
「いやぁ、ほんとにありがとな! しかも禄助くんに至っては公開告白したんだって?」と御薬袋先輩が紙コップに入ったオレンジジュースを一気に飲み干すと、ニヤつきながら俺に問いかけてきた。
「それ僕も見たかったんだよ……。自宅謹慎とかなってなければ……」と式神先輩は謹慎になったのはお前のせいだけどな! と言わんばかりに御薬袋先輩のことを睨みつけたあと、気になるといった視線を俺に向けてくる。
「いや、恥ずいですって!」そう笑ってごまかそうとするが、笠原先輩が「感動的だったぞ」と追い打ちをかけてくる。
本当に恥ずかしいのでやめてほしい。
しかし俺が口を割らないと気づくや否や、標的を夜一に変えてきた。
「夜一くん、だっけ? 夜一くんは禄助くんの何処が好きになったの?」
「自分をしっかりと持っているところ、ですかね。思ったことをすぐ口にしちゃうところとか嘘がつけないんだなって思うと可愛いですよ」
「せっかくの菓子が更に甘くなるだろうが」
御薬袋先輩からの問いかけに答えた夜一であったが、惚気に耐えきれなかったのか笠原先輩はため息交じりに嫌味を言う。
それを夜一は笑って交わしながら「お菓子は甘いほうが美味しいんですよ」と微笑んだ。
そんな空気感に耐えきれなくなった俺は別の話を振る。
「夜一は本当に生徒会に入らないのか? 笠原先輩もよかったんですか?」
実はあの事件以降、校長先生からの推薦で夜一と笠原先輩に生徒会に入らないか? という勧誘があったらしいのだが、二人はそれを丁重にお断りをしたらしい。
夜一は塾があるからという理由でお断り。
笠原先輩はバイトもあるし、それに生徒会には向いていないという理由でお断りをしたようだ。
一応夜一からは事前に相談を受けたのだが、夜一のやりたいようにするべきだと伝えた結果、今回がお見送りとなったらしい。
塾を優先するところは実に夜一らしいと俺は思う。
「まぁ塾があるしね。それにずっと禄助と一緒だと俺の身がもたないよ」
「俺も大丈夫だ。それに今はお前たち三人の生徒会の方が良いと思うぞ。今大注目の三人だしな」
笠原先輩に悪気は無いのだろうが大注目というのは事実なので、恥ずかしさで胸が締め付けられる。
というのも、全校集会で告白をし、成功をさせた俺は今や時の人となっている。
休校が終わり、翌日登校するときは心臓が今までにないほど波打っていたのを今でも覚えている。
クラスでも同性同士の恋愛に否定的な意見や考えを持っている生徒は少なからずいた。そのため学校の門をくぐるのが怖かったのだ。
しかし俺の予想は良い意味で裏切られた。
教室に入った瞬間に鳴らされたクラッカーと祝福の言葉に俺は安堵をしたのだ。
「マジですげーよ! 全校生徒の前で告白とかさ!」
「私泣いちゃったもんね! 本当におめでとう」
「変な言葉投げてマジでごめん! 俺本当に二人の事応援してるわ!」
そんな言葉を投げてくれたのは、何も同じクラスの生徒だけではない。
移動教室や合同授業の時など他の一年生からも声をかけられたり、何か飲み物を買おうかと自動販売機を使っていると後ろから先輩方から「かっこよかったよ!」と声をかけてくれることもあった。
それは俺だけではないようで、噂が本当になった御薬袋先輩や式神先輩は同学年から質問攻めに合っているという噂を耳に挟んだ。
そんな俺たちは放課後、生徒会室に集まり顔を見合わせるや否や、ため息交じりに笑いあったのを覚えている。
「まぁそうだな。一時は俺たち三人で頑張ろうか!」
「私もサポートしますからね」
校長も微笑みながら、そう語りかけていた。
「それにしてもカップルが二組もこの空間に居るのは、なんだか面白いですね。と言うわけでこちらをどうぞ」
そういうと校長先生は御薬袋先輩と式神先輩。夜一と俺に一枚ずつ遊園地のチケットを手渡してきた。
「笠原くんにはこれね」
カップルにしか渡さないと思っていたが、笠原先輩には別のものを用意していたようで図書カードを手渡していた。
「え、いいんですか?」
「もちろんだよ。あ、笠原くんも遊園地がよかった?」
「まさか……! こんな二組と一緒に行ったら惨めな思いをするだけですよ。図書カードの方が何十倍も嬉しいです。ありがとうございます!」
「それはよかった。」
校長先生が喜んでいるのを尻目に、遊園地のチケットを渡された組は顔を見合わせる。
これってダブルデートってことですか!!



