灰理が次に目覚めた時には茶屋ではなく、薄暗い物置のような場所にいた。
どこからか、絶えず水の流れる音が聞こえている。
轟々という激しい音ではなく、一定の間隔で規則的に水が落ちる音。
その合間にぎい、と古びた木材が軋む。
湿った空気が肌にまとわりつき、鼻の奥には苔と腐った木のような匂いが残った。
(ここは……どこ?)
人の気配は感じない。まるで世界から切り離された場所に、一人だけ置き去りにされたようだった。
両手は後ろに回され、手首を縄できつく縛られている。両足首も同じように縄で縛られ、その縄の先には大きな重石が繋がっていた。
口には布が当てられて声が出せない。
(どういうこと……?)
突然見知らぬ場所に監禁されたのは明白だった。
黒須家にいた頃、晶穂の怒りを買って納屋に閉じ込められたことを思い出す。あの時はまだ縛られていない分マシだったかもしれない。
「ん〜っ、んん〜っ!」
助けてと声をあげたくても声が出せない。
ジタバタと暴れても縄が締め付けられて痛いだけ。縄がこすれて傷がついてもすぐに治るが、解けなければ意味がない。
(誰か助けて……っ!)
何故こんなことになったのかわからず、恐怖心に苛まれながら必死に暴れて助けを呼ぶ。
だが扉の奥からは物音すらも聞こえなかった——。



