たとえ腹違いで瑛気を持たなかったとしても、妹であることに変わりはない。直道はそういって抄子を助けるが、父親の水野伯爵はそれを許さなかった。
典型的な非瑛人差別をする父に耐えきれず、直道は抄子を連れて家を出た。
その際に声をかけてくれたのが千輝だったという。
「千輝様は私たちの事情を聞くと、住む家を与えてくださったのです。私が非瑛人だと知りながら受け入れてくださり、温かいごはんもいただいて涙が出ました」
「そうだったのね……」
「だから私たち兄妹にとって、千輝様は命の恩人なんです」
その話を聞いて、やはり公爵を継ぐのは千輝しかいないと思った。
直道の千輝に忠義を誓ったと言ったあの言葉は、どれほど重いものだったのだろう。
「私も質問してよろしいですか?」
「ええ、何?」
「夜会で何かありましたか? あの日から灰理様、ずっと元気がない気がします」
抄子は心配そうに灰理を見つめる。
「心配かけてごめんなさい。ちょっと考え事をしていて元気がないように見えたのかも。でも大丈夫よ」
「本当ですか?」
考え事をしていたのは、理人を語った時の左京の言葉に滲み出ていたほのかな違和感。
あれが何だったのか気になって仕方ない。
(もしかして公爵様が……なんて憶測だけで疑うのは良くないとわかっているけれど)
千輝には話せていない。
千輝の実の父親が理人を毒殺したかもしれないなんて、口が裂けても言えなかった。
確かめる術もなく、ただ悶々と悩む日々を送っている。



