有限の時を貴方様とともに〜化物姫は呪われた貴公子に寵愛される〜



 野花が亡くなって以降、灰理は黒須家の召使いのような扱いになる。晶穂と史乃はますます灰理を虐げた。

『このドブネズミ! 私の着物を汚したわね!』
『え……』
『素直に白状しなさい、ドブネズミ。お前がお姉さまの着物にシミをつけたことはわかっているのよ』

 全く身に覚えがなかったが、すぐに悟る。晶穂の着物を汚したのは史乃で、それを灰理になすりつけたのだ。

『そこで一人で反省していなさい!』
『お待ちください。私は……っ!』

 晶穂は何かあるとすぐに灰理を殴り、納屋に閉じ込めた。暗くジメジメした納屋の中で、灰理は一人膝を抱える。

(私が何をしたというの……?)

 ただ他の人と髪色が違う、それだけだ。見た目が違うたったそれだけのことで何故ここまでのことをされなければならないのだろう。

 黒須家の者は皆灰理に無関心だ。使用人たちも野花が異国の男との間に子どもをつくった卑しい娘だと噂していた。
 灰理を庇う者は誰もいない。皆が見て見ぬふりをする。
 苦しくてもつらくても、それでも灰理は必死に耐えた。

(灰かぶり姫だってどんなにいじめられても頑張っていたもの)

 きっといつかは王子様が迎えに来てくれる。そんな風には思えないけれど、きっといつかはこの生活が変わるはず。そう信じて日々を必死に生きていた。