幼い千輝は泣いていた。細かな光をいくつも出し、まるで蛍の光のような光景をつくり出せるようになったので、父に披露したら青筋を立てて怒鳴られた。
『そんなくだらん使い方を覚えるな! お前の持つ瑛気はお遊びに使うものではない!』
ただ新しい使い方を覚えたので、父に褒めてもらいたいだけだった。
叱られた千輝が一人で泣いていると、叔父の理人がやってくる。
『どうしたいんだい、千輝』
『お、おじうえ〜……』
『よしよし、泣いていちゃわからないよ』
理人は千輝の頭を撫でて優しく慰めた。
『ぼくがえいきをじょうずにつかえないから、父上はおいかりなんです……』
『そうか、そうか。でもね、千輝の持つ光の瑛気はとても扱い方が難しいと言われているんだ』
『でも……』
『大丈夫、千輝なら上手くなるよ』
理人はにっこり微笑んだ。
何を見せたのか尋ねられ、同じように蛍の光を見せたら手を叩いて喜んだ。
『すごいじゃないか! とっても綺麗だよ』
『でも、父上はくだらないって』
『そんなことない。私はとても感動したよ。人の心を動かすことは、くだらないことなんかじゃない』
『おじ上……』
『千輝はすごいね』
そう言って褒めてくれる優しい叔父が大好きだった。
父からは感じられなかった愛情を、理人はたくさん注いでくれた。
なのに、どうして――。
「……懐かしい夢を見たな」
目を覚ました千輝は静かに起き上がる。あれは確か、五歳くらいの夢だった。
「千輝様」
コンコンという扉を叩く音とともに直道の声がする。
「入れ」というと静かに扉が開いた。
「千輝様、お支度は整っております。お加減はいかがですか」
「お前たちが無駄に休めというからすこぶる調子が良い」
「それはようございました。こちら、灰理様より本日分にございます」
直道が差し出したおぼんの上には、先程採取したばかりと思われる鮮血がお猪口の中で揺れている。
最初こそ鉄の味しか感じなかったが、毎日飲んでいると不思議なことにスッと体の中を浄化してくれるような感覚を覚える。
(効果を得られているということなんだろうな)
半信半疑で始めた治療法だったが、上手くいくとは思わなかった。
まだ気怠いと感じる時もあるが、こうして起き上がれるまでには回復した。
それでも体に広がった黒い痣が消えることはないが。
(もってあと一年だろうな……)
寝間着を脱ぎ捨て直道の用意した黒いスーツに袖を通す。
着替えて部屋から出ると、ばったりと灰理と鉢合わせる。灰理は千輝の顔を見るなり、「あ……」と声を漏らして頬を染める。



