増幅薬を飲まされた直後から、体に黒い痣があった。
最初は小さかったものの、その痣は瑛気を使うたびに広がっていくことに気が付いた。
「これは古来より『短命の呪い』と呼ばれているものでした。黒い痣が全身に蔓延すると、死に至ると言われています」
「それが、千輝様の痣ですか……? せっかく生き延びたのに、呪いだなんて」
「昔は呪いだと言われていましたが、実際は呪いなどではありません」
優次郎が調べて判明したことだが、増幅薬の成分は一定量を超えると過剰に瑛気を強める。
爆発的に高められた瑛気は体を蝕み、容量を超えて耐えられなくなる。
「高まりすぎた瑛気に体が耐えられなくなり、その結果寿命が削られる。これが『短命の呪い』の正体です」
そして千輝は思い出す、同じような痣が生前の理人にもあったことを。
「お父様にも痣が? どういうことですか……?」
「叔父上は、病死ではなかった。私と同じように増幅薬を多量に飲まされ、呪いをかけられたのです」
「そんな……! つまり、父は……っ」
「……何者かに毒殺された、ということになります」
千輝は拳を握りしめ、痛切な表情で目を伏せる。
「そ、んな……」
灰理は目眩がした。想像もしていなかった真実を伝えられ、震えが止まらない。
「お父様が、どうして……っ!」
「灰理さん」
震える灰理の手を千輝は握りしめる。
「あなたにお話すべきかどうか悩みましたが、あなたには真実を知る権利がある。私に残された時間が少ない以上、お伝えすべきだと思いました」
「……っ、うぅ……っ」
灰理は嗚咽を漏らして泣きじゃくる。
泣いてどうにかなることではないとわかっていても、涙が止まらない。
あんなに優しい父がどうして殺されなければならなかったのだろう。
しかも千輝も全く同じ呪いに冒されている。
こんなにつらいのが現実だなんて、信じたくない。悪い夢なら今すぐに覚めてほしかった。



