千輝が目覚めたのは倒れてから二日後のことだった。
抄子から千輝が目を覚ましたと報告を受け、灰理は急いで千輝の部屋に向かう。
「千輝様!」
「灰理さん」
部屋に入ると、千輝が起き上がっていた。その隣では直道が控えている。
「すみません、ご心配をおかけしましたね」
「千輝様……っ」
いつも通り朗らかな笑みを浮かべる千輝を見て、涙を堪えられなかった。
糸が切れたようにぼろぼろと涙がこぼれ落ちる。
「うっうっ、よかった……っ」
この二日間、生きた心地がしなかった。
もう目覚めなかったらどうしようと最悪な想像をして、胸が押し潰されそうになっていた。
「……直道、少し席を外してくれるか」
「はい」
直道は一礼し、「何かあればすぐにお呼びください」と言って部屋を出た。
「灰理さん」
千輝は優しい声音で灰理を呼びかける。それだけで察した灰理は、涙を拭って千輝の隣に歩み寄った。
千輝は優しく灰理の頬に触れる。
「目の下に隈ができている。眠れていないのですか?」
千輝は心配そうに灰理の顔を覗き込む。こんな時でも自分より灰理を心配する千輝に胸が締め付けられながら、ぼろぼろと涙をこぼした。
「千輝様、ごめんなさい……っ」
「どうしてあなたが謝るのです?」
「私が瑛気を使わせたから……っ」
「違いますよ、私が勝手にしたことです。優次郎にはきつく叱られました」
千輝は肩を竦めて苦笑する。
「瑛気を使うなと言われても、目の前で困っている人を見るとどうしてもね。私には助けられるのに、何もしないなんてできないんですよ」
「千輝様……」
「それにあなたの前では格好付けたくて。すみません」
命を削るとわかっていても、困っている人がいたら手を差し伸べずにはいられない。それが千輝という人間の性。
彼の美徳であり、灰理が心惹かれるところでもある。
だが、それでも千輝を失うなんて考えられない。
「嫌です……千輝様がいなくなるなんて」
「この痣、見てしまわれたんですよね」
千輝が寝間着の裾をまくると、腕には真っ黒い痣が広がっている。
「……はい」
「黙っていて申し訳ありませんでした」
「教えていただけますか? あなたの呪いについて」
「はい、今から三年前になります——」



