その時、背後に気配がしたと思ったら首を絞められた。
「……っ!? う……っ!」
「この化物が! 私の着物を返しなさいよっ」
帯紐のようなものでキツく首を絞められ、息ができない。
「……っ!」
「どーせ死なないんでしょ!?」
「んぅっ!」
灰理は必死でもがいて解き放たれようとするが、晶穂は力を緩めようとはしない。むしろ一層強く締め付ける。
(息が、できない……っ!)
「私と変わりなさい! 紫上院公爵の次男・千輝様といえば光り輝く貴公子と呼ばれているお方よ。私の方がふさわしいに決まっているわ!」
「……っ、いや、です……」
逃れようと必死にもがきながら、灰理は声を絞り出す。
「何ですって?」
「いや、です……っ!」
初めて晶穂に抵抗した。今までは叩かれても蹴られても必死に耐えていた。
暴行された傷は治っても、彼女に植え付けられた恐怖心は消えない。だから必死に歯を食いしばって耐えていた。
でも、千輝の婚約者という立場だけは晶穂には譲れない、譲りたくないと思った。
「この卑しい化け物め! 身の程を知りなさい!」
もうダメだ、と思った。更に強く締め付けられて窒息して意識を手放してしまいそうになった、その時。



