君と埋める八の項目

ミミミミミミ、という虫の鳴き声がオレンジ色に染まる公園に響いている。
あんなに楽しげな声で溢れていたというのに、今聞こえてくるのは帰りたくないと駄々をこねる泣き声と、子供を呼ぶ母親の声。

滑り台の下にある秘密基地で、二人は小さな手をつないで息を潜めていた。
徐々に一つしかない入り口からも光が入ってこなくなり、視界は暗くなる。
それに比例して、握りしめる手の強さが増した。

遠くから聞こえる母が自分を呼ぶ声に、幸弘はどうして良いか分からない。
太陽はこんなにも帰りたくないと泣いているのに、放ってはおけなかった。

「たいよう……」

「……ぅ、っく、……ユキぃ……、まだユキといるぅ……ゔ、うぅ」

太陽はほとんど毎日こうだった。
保育園でも一緒にいて、ほぼ毎週のように遊んでいるというのに、太陽は幸弘と離れるのを嫌がる。

「あしただって、ほいくえんだぞ。ごはんたべて、ねたらあえる」

「うあぁぁ、ユキはっ、ぼくといたくないぃんだぁ……っ!」

「ちがっ、いたいけど! かえらないと……」

近づいてくる母の声と足音、空洞に響く太陽の泣き声。
幸弘も泣きそうだった。
だが、太陽が泣いているのに幸弘が泣いてはいけない。
幸弘は太陽を抱きしめて、ずっと一緒だと宥める。

「……ずっとって?」

「ずぅ~っとだ。おとなになっても、おじいちゃんになっても、ずっといっしょ」

「でも、かえったらずっとじゃない……!」

「おかあさんいってた。おおきくなってからのほうがながいって」

「……いまだけがまん?」

「そう」

ようやく太陽が泣き止もうと努力を始める。
ひっく、ひっく、と止まらないしゃっくりを必死に噛み殺そうと幸弘にくっついてくる。
この日は探しに来た母達に引き離されて、泣き止もうと努力していた太陽はやっぱり大泣きして、また明日と言うのが辛かった。
この日だけじゃない。
次の日も、翌週も、翌年も、小学校の低学年が終わる頃までそれは続いた。
けれど、幸弘はいつだって、太陽に伝え続けた。

「大人になったら、ずっと一緒にいられる」

その言葉を今、太陽が覚えているかは知らないが、二人は高校までずっと一緒だった。

――ずっと一緒。

その言葉はどこまで本当なのだろうか。