「理都、チェックして」
「かしこまりました」
「もう帰るの?」
「帰るなら送るが」
「まだいるから、大丈夫」
貴也をお見送りする際、「あと彼女よろしく」とそっと頼まれた。
そういうところだよ。
根っからの紳士だと思う。
なにげにやっちゃうから、自分だけって思ったら痛い目に遭うんだ。
そんな男が恋人候補に名乗り出た。
本当ならホイホイと乗っかるんだろうけど、できないんだよな。
「かなり重症だね」
「なにがです?」
「もう、わたしだけなんだから敬語禁止」
るぅちゃんが頬を膨らませキッとにらんだ。
「じゃ、お言葉に甘えて」
「よしよし。腹割って話そう」
漢だなぁ。かっこいい。
「で、なにが重症?」
「恋煩い」
「煩ってないけど」
「そうは見えないよ?」
るぅちゃんがそう言って、キウイで作った甘いカクテルをちょっと口に含んだ。
「だから腹割って話そうって言ってるでしよ」
「でも本当に——」
「もしかして、鈍感なの?」
貴くん可哀想って、ブツブツとこれ見よがしにつぶやいている。
「それとも臆病なのかな?」
「臆病——」
そうかもなぁ。
恋愛って誰かの気持ちありきだから、どうしてもおれなんかって思ってしまう。
「ひとりでできるならいいんだけどな」
「それっておもしろいの? 誰かとするからいいんじゃないのよ」
るぅちゃんがケラケラと笑う。
「貴くんからあんなに大切に思われてるのに、それでもダメ?」
「ダメというか、みんなに対して優しいだろ? 勘違いじゃないかって思うんだよ」
「あー……ね」
頬杖をして、るぅちゃんが斜め上を見る。目をキョロキョロさせてなにかを考えあぐねてる感じ。
「ねえ、るぅちゃん。なんでそんなに気にかけてくれてるの?」
「だっていつも理都くん、この人のこと好きなのかなっていう顔しててさぁ」
あー、それは例のヤツか。
バレてないって思ってたの、やっぱりおれだけだったのか?
「理都くんて意外と恋多き男っぽいよね」
「いや、それはちょっと違うかな」
おれは妹みたいな女の子になにを話そうとしてんだ?
でも……
一歩を踏み出す勇気? っていうの、るぅちゃんに話したら手に入る気がする。
「臆病ってのは正解だよ。昔嫌な思いをしたんだ。それがずっと引っかかってる」
おれは胸をたたいた。
ずんと古い記憶が胸にのしかかる。固く目を閉じて深く呼吸をした。
「でもやっぱり人を好きになりたいんだよね。なのにそれを目に見える形にするのはすごく怖くて……」
るぅちゃんがうんうんとうなずく。
「誰にも言ったことないけど、毎日『この人のために』って思いながら接客してた。思うだけなら誰も傷つかないって思ってね」
「……ああ、そういうことね」
またこくりとカクテルを飲んで、るぅちゃんがため息をついた。
「で? 誰も傷つかなかった?」
「……そうじゃなかったみたいだね」
きのうのことを思い出す。
彼がどういう意図で絡んできたかはわからないけど、誰かを振り回すことを自分はやらかしてたってことはよくわかった。
「理都くん、感情ダダ漏れだもんね」
明るく笑うるぅちゃんが、すっと真顔になって見つめてきた。
「それで? その恋愛ごっこ、これからも続けるの?」
「いや、やめるよ」
「なら本当の恋は?」
言葉に詰まった。
そしてなぜか貴也が頭に現れた。
まただ。
あの熱にうなされたときに似た感情が胸を締めつけてくる。
「理都くん。無理はしないで」
自分の眉間に指を指して、心配そうにしてくれる。
「嫌なことあったんだろうけど、恋をするって素敵なことだからさ。否定しないで」
「そうだけど……」
「まずは好きの前に、信じてみたら?」
「信じる?」
「そう。信じる」
にっこり笑うと残りのカクテルを一気に飲み干した。
「かしこまりました」
「もう帰るの?」
「帰るなら送るが」
「まだいるから、大丈夫」
貴也をお見送りする際、「あと彼女よろしく」とそっと頼まれた。
そういうところだよ。
根っからの紳士だと思う。
なにげにやっちゃうから、自分だけって思ったら痛い目に遭うんだ。
そんな男が恋人候補に名乗り出た。
本当ならホイホイと乗っかるんだろうけど、できないんだよな。
「かなり重症だね」
「なにがです?」
「もう、わたしだけなんだから敬語禁止」
るぅちゃんが頬を膨らませキッとにらんだ。
「じゃ、お言葉に甘えて」
「よしよし。腹割って話そう」
漢だなぁ。かっこいい。
「で、なにが重症?」
「恋煩い」
「煩ってないけど」
「そうは見えないよ?」
るぅちゃんがそう言って、キウイで作った甘いカクテルをちょっと口に含んだ。
「だから腹割って話そうって言ってるでしよ」
「でも本当に——」
「もしかして、鈍感なの?」
貴くん可哀想って、ブツブツとこれ見よがしにつぶやいている。
「それとも臆病なのかな?」
「臆病——」
そうかもなぁ。
恋愛って誰かの気持ちありきだから、どうしてもおれなんかって思ってしまう。
「ひとりでできるならいいんだけどな」
「それっておもしろいの? 誰かとするからいいんじゃないのよ」
るぅちゃんがケラケラと笑う。
「貴くんからあんなに大切に思われてるのに、それでもダメ?」
「ダメというか、みんなに対して優しいだろ? 勘違いじゃないかって思うんだよ」
「あー……ね」
頬杖をして、るぅちゃんが斜め上を見る。目をキョロキョロさせてなにかを考えあぐねてる感じ。
「ねえ、るぅちゃん。なんでそんなに気にかけてくれてるの?」
「だっていつも理都くん、この人のこと好きなのかなっていう顔しててさぁ」
あー、それは例のヤツか。
バレてないって思ってたの、やっぱりおれだけだったのか?
「理都くんて意外と恋多き男っぽいよね」
「いや、それはちょっと違うかな」
おれは妹みたいな女の子になにを話そうとしてんだ?
でも……
一歩を踏み出す勇気? っていうの、るぅちゃんに話したら手に入る気がする。
「臆病ってのは正解だよ。昔嫌な思いをしたんだ。それがずっと引っかかってる」
おれは胸をたたいた。
ずんと古い記憶が胸にのしかかる。固く目を閉じて深く呼吸をした。
「でもやっぱり人を好きになりたいんだよね。なのにそれを目に見える形にするのはすごく怖くて……」
るぅちゃんがうんうんとうなずく。
「誰にも言ったことないけど、毎日『この人のために』って思いながら接客してた。思うだけなら誰も傷つかないって思ってね」
「……ああ、そういうことね」
またこくりとカクテルを飲んで、るぅちゃんがため息をついた。
「で? 誰も傷つかなかった?」
「……そうじゃなかったみたいだね」
きのうのことを思い出す。
彼がどういう意図で絡んできたかはわからないけど、誰かを振り回すことを自分はやらかしてたってことはよくわかった。
「理都くん、感情ダダ漏れだもんね」
明るく笑うるぅちゃんが、すっと真顔になって見つめてきた。
「それで? その恋愛ごっこ、これからも続けるの?」
「いや、やめるよ」
「なら本当の恋は?」
言葉に詰まった。
そしてなぜか貴也が頭に現れた。
まただ。
あの熱にうなされたときに似た感情が胸を締めつけてくる。
「理都くん。無理はしないで」
自分の眉間に指を指して、心配そうにしてくれる。
「嫌なことあったんだろうけど、恋をするって素敵なことだからさ。否定しないで」
「そうだけど……」
「まずは好きの前に、信じてみたら?」
「信じる?」
「そう。信じる」
にっこり笑うと残りのカクテルを一気に飲み干した。

