カウンターに肘をつき、人差し指と親指で顎をさする。その瞳はおれを見据え、まったく笑っていない。
「でね。助けてくれたお礼だってみんなに1杯ずつおごってくれたの。ねー理都くん」
ガールズバーのるぅちゃんが、きのうの顛末を目の前に座っている男にベラベラと話してしまっている。
気まず……
隠すつもりはないけれど、話すつもりもなかった。
まさか、ふたりが繋がってるとか思わないじゃん。
仕事の付き合いとかあるからさ、ガールズバーとか行くのかもしれないけど、ピンポイントで知り合いってさ。
どんだけ世間狭いんだよ。
「貴くんと話してて理都くん知ってるっていうから来ちゃった」
ふたりして店に顔を出したとき、かなり驚いたわ。
それに貴くんて——どんだけ常連様なんだよ。
「理都。なぜ俺を呼ばなかった?」
あー。声がいつも以上に低い。
少しは考えたけど、呼べないって。
恋人——じゃないし。
「え、貴くんが理都くんの恋人なの?」
あっけらかんとるぅちゃんが訊いてくる。
「いや、ち——」
「そうだ」
被せてくるな。それに否定しろって。
「うそ。ほんと? え、ほんとなの?」
気忙しく貴也とおれを交互に首を振るるぅちゃんに訂正しようにも、先に貴也が答えてしまった。
「ああ、理都は俺の恋人だ」
ほら。るぅちゃん固まったし……。
「——違いますね、恋人ではない、ですね」
そうだよ。まだ心の整理がついてないし。
目の前のふたりが同時にため息をついた。
「そうだな、まだ恋人候補だ」
「でも候補なのね?」
呆気なく貴也は認めて、なぜかるぅちゃんは目を輝かせた。
貴也を見るとまだ目が据わったままだ。
呼ばなかったのがまずかったのか?
でもあそこで呼ぶなんて都合よすぎだろ。
そんなことで貴也を使いたくない。
もっとちゃんとして——
ちゃんとして? とは?
「理都くんは、貴くんのどこがダメなの?」
「ダメ……とかじゃなくて」
「ならいいじゃない、付き合っちゃえば?」
「そう簡単には」
「なんで、難しく考えてんの?」
参ったなぁ。
女の子のこの押しの強さが苦手なんだ。
特にるぅちゃんてふわふわしてそうで、芯をズバッとついてくるから、いつも言い返せなくなる。
「そうだな。難しく考えすぎだ」
貴也も同調する。
「それもそうだが、理都」
また深くにらむ。
おれ叱られるのかな。
「理都の接客は危うすぎて見ていて心臓に悪い」
「あーわかる、それ。わたしも勘違いしそうになるもん」
なんかめまいがする。
そんなに酷いのか? これまでの接客全否定ですか?
「本気か冗談か、わかる人ならいいんだが」
「そうなの。きのうの西田さんみたいな人だと、やった! ヤレる! って突っ走っちゃう」
るぅちゃんの言葉で今度こそはっきり貴也の眉間にシワが寄った。
「るぅちゃん、言葉……」
「だって実際そうだったんでしょ? わたしたちが行かなかったらどうなってたか」
「ちゃんと締め出してましたよ。ご心配なく」
「心配させることをするんじゃない」
貴也が重たく口を開く。
「そう、ですね」
3人が来なければ——
締め出せた自信はないな。
自分が楽しければって始めた今日の恋人。
かなり危ういことしてたのか。
「理都くん。大事にされてるね」
るぅちゃんがにっこり笑う。
大事——?
「貴くん、保護者みたい」
思わず笑ってしまった。
貴也が親だったら、過保護にされそうだな。
「保護者か——そばにいられるなら、それもありかもな」
「もう、冗談はやめてください」
「俺はいつも本気だが」
会話にならないなぁ。
おれが話し合いを避けてるのかもしれないけど、今更素直に、お願いします、なんて言えないって。
一歩を踏み出す勇気って持ち合わせてないんだよ。
るぅちゃん。
憐れむような目で見ないでくれる?
「がんばれっ」
どういう意味?
おれ、がんばらないといけないのか……?
「でね。助けてくれたお礼だってみんなに1杯ずつおごってくれたの。ねー理都くん」
ガールズバーのるぅちゃんが、きのうの顛末を目の前に座っている男にベラベラと話してしまっている。
気まず……
隠すつもりはないけれど、話すつもりもなかった。
まさか、ふたりが繋がってるとか思わないじゃん。
仕事の付き合いとかあるからさ、ガールズバーとか行くのかもしれないけど、ピンポイントで知り合いってさ。
どんだけ世間狭いんだよ。
「貴くんと話してて理都くん知ってるっていうから来ちゃった」
ふたりして店に顔を出したとき、かなり驚いたわ。
それに貴くんて——どんだけ常連様なんだよ。
「理都。なぜ俺を呼ばなかった?」
あー。声がいつも以上に低い。
少しは考えたけど、呼べないって。
恋人——じゃないし。
「え、貴くんが理都くんの恋人なの?」
あっけらかんとるぅちゃんが訊いてくる。
「いや、ち——」
「そうだ」
被せてくるな。それに否定しろって。
「うそ。ほんと? え、ほんとなの?」
気忙しく貴也とおれを交互に首を振るるぅちゃんに訂正しようにも、先に貴也が答えてしまった。
「ああ、理都は俺の恋人だ」
ほら。るぅちゃん固まったし……。
「——違いますね、恋人ではない、ですね」
そうだよ。まだ心の整理がついてないし。
目の前のふたりが同時にため息をついた。
「そうだな、まだ恋人候補だ」
「でも候補なのね?」
呆気なく貴也は認めて、なぜかるぅちゃんは目を輝かせた。
貴也を見るとまだ目が据わったままだ。
呼ばなかったのがまずかったのか?
でもあそこで呼ぶなんて都合よすぎだろ。
そんなことで貴也を使いたくない。
もっとちゃんとして——
ちゃんとして? とは?
「理都くんは、貴くんのどこがダメなの?」
「ダメ……とかじゃなくて」
「ならいいじゃない、付き合っちゃえば?」
「そう簡単には」
「なんで、難しく考えてんの?」
参ったなぁ。
女の子のこの押しの強さが苦手なんだ。
特にるぅちゃんてふわふわしてそうで、芯をズバッとついてくるから、いつも言い返せなくなる。
「そうだな。難しく考えすぎだ」
貴也も同調する。
「それもそうだが、理都」
また深くにらむ。
おれ叱られるのかな。
「理都の接客は危うすぎて見ていて心臓に悪い」
「あーわかる、それ。わたしも勘違いしそうになるもん」
なんかめまいがする。
そんなに酷いのか? これまでの接客全否定ですか?
「本気か冗談か、わかる人ならいいんだが」
「そうなの。きのうの西田さんみたいな人だと、やった! ヤレる! って突っ走っちゃう」
るぅちゃんの言葉で今度こそはっきり貴也の眉間にシワが寄った。
「るぅちゃん、言葉……」
「だって実際そうだったんでしょ? わたしたちが行かなかったらどうなってたか」
「ちゃんと締め出してましたよ。ご心配なく」
「心配させることをするんじゃない」
貴也が重たく口を開く。
「そう、ですね」
3人が来なければ——
締め出せた自信はないな。
自分が楽しければって始めた今日の恋人。
かなり危ういことしてたのか。
「理都くん。大事にされてるね」
るぅちゃんがにっこり笑う。
大事——?
「貴くん、保護者みたい」
思わず笑ってしまった。
貴也が親だったら、過保護にされそうだな。
「保護者か——そばにいられるなら、それもありかもな」
「もう、冗談はやめてください」
「俺はいつも本気だが」
会話にならないなぁ。
おれが話し合いを避けてるのかもしれないけど、今更素直に、お願いします、なんて言えないって。
一歩を踏み出す勇気って持ち合わせてないんだよ。
るぅちゃん。
憐れむような目で見ないでくれる?
「がんばれっ」
どういう意味?
おれ、がんばらないといけないのか……?

