宵闇の夜明け ―無人島で拾った運命の断片―

カチカチ、と規則正しいタイピング音が、薄暗いワンルームに響く。

都内、古い雑居ビルの一室。昼間は事務職として書類の山と格闘している私は、夜になると「宵闇占術所」の占い師、サキになる。





noteの投稿画面を開き、私は「秘密」というタイトルの記事を書き始めていた。

『恋愛において、誰にも言えない秘密を持つことは、呪いではありません。それは、自分という存在を支えるための、たった一つの確かな背骨になることもあります』





ふと、自分の眼鏡を外して目を閉じる。

まぶたの裏に浮かぶのは、都会のネオンではなく、あの夏の痛いくらいに青い海と、夜空を埋め尽くした星々の瞬きだ。





今の私を作ったのは、統計学としての占いではない。あの三日間、世界の果てのような島で、一人の少年の体温と、絶望の果てに見上げた星の導きだった。

26歳の私が、今の私を鑑定するなら、きっとこう言うだろう。





「あなたはあの時、自分を捨てて、運命を拾ったのね」と。

これは、誰にも話したことのない、私の「占い師としての誕生日」の記録。